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第6話

「あんまりノロノロしてると、電気点けるよ。他に車はいないけど、入ってきたら丸見えだよね」  こんな真冬のしかも深夜に公園へと来る人間なんて殆どいやしないだろうが、万が一という事もあるから、指の震えを悟られないよう壮一は手早くボタンを外し、それが終わるとニットとタートルを一気に掴んで脱ぎ去った。  時間稼ぎをしたところで、きっとどうにもならないだろう。 「次、背中向けて。大丈夫、スタンガンは使わないから」 「一体何を…… 」 「黙って言うこと聞けよ」  凄みを帯びた低い声音はこれまで聞いた事が無く、対応に迷った壮一はそれでも光希の言うとおりにした。  自分が聞くと言ったのだから、嘘を吐くような真似は出来るだけしたくない。 「……っ」  背中を彼へと向けた途端、スタンガンを置いた光希に両方の腕を後ろへ引かれ、カシャリと金属音がした。  慌てて壮一が背後を見遣ると手首には既に手錠が嵌められ、その真ん中から伸びた鎖を掴んだ光希が、それをハンドルに引っかけてから、壮一のコートを掴み取る。 「外は寒いから、羽織っていいよ」 「高林……お前、何考えてんだ? これ、外せよ」 「好きにしていいって、内田さんが言ったんだろ」  夜目が利くから彼が微笑を浮かべているのは分かったが、瞳は全く笑っておらず、無理矢理コートを肩に掛けられてマフラーを首に巻かれる間、気圧された壮一は声を放つ事すら出来なかった。 「行くよ」  それが終わると鎖を手に取り、もう片方の手でスタンガンを持った光希がドアを開くけれど、壮一はそこから動けない。  こんな、変態じみた行為を彼に強要されるなんて事は、想像すら出来なかったし、知っていれば彼の申し出を間違いなく断っていた。 「ごめん、こういうの……無理だから」 「無理とか関係ないだろ? 大丈夫、月曜には家に返してやるよ」  何とか宥めようとするけれど、まるで取り付く島がない。  そればかりか、焦れたような舌打ちを漏らした彼の腕が伸びてきて、抵抗する暇もないまま、運転席のドアから壮一は車外へと……引き摺られるよう外に出された。

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