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第8話
「あ、お腹大分膨らんだ。そろそろ抜こうか……でも、その前に…… 内田さんからキスしてって言えよ」
「ゔっ…… あぁっ、キ…キスしてっ」
下腹を満たす冷たい水に、身体の芯が冷え切って……早くここから抜け出したいという一心で、喘ぐように言葉を紡ぐと、嬉しそうに微笑んだから、心が酷くざわついたけれどそれを考える余裕もない。
「いいよ。してあげる」
「んっ…くぅ…ふっ…… 」
唇に激しく吸いつかれ……同時に身体を持ち上げられれば、注がれ続けた水がすぐに溢れ出してくる筈なのに、緊張と寒さに強ばる身体は機能を停止したようで、肛門の緩め方すら分からなくなってしまっていた。
「んぐっ…… んっ」
キスをするのは二回目だ。
最初に関係を持った夜、水を飲ませる為にされたけど、以降絶対にキスはするなと壮一が堅く禁じていた。
キスは情を深める行為で、セフレ相手にするものじゃない。
「立てる? 」
纏っている冷たい空気と、真逆のキスに戸惑いながらも、唇が離れた瞬間寂しい気持ちがこみ上げた。
だけど、それを悟られてはいけない。
「う……ゔぅっ! 」
どうにか脚をグッと踏みしめて、上体を丸めながらも立つと、羽織っていたコートも剥がれて全裸に靴と靴下だけという情けない格好を強いられた。
更に、寒いだろうとマフラーだけを巻かれた滑稽な格好に……青ざめた壮一はもう止めてくれと懇願したが、何も言わずに彼は歩き出し、背後から伸びる鎖に引かて付いていくしか出来なくなる。
「おなか…腹、痛い……トイレ… 行かせて」
「それは駄目。だけど、ここでなら出していいよ」
彼の放った意地悪な言葉に鼻の奥がツンとした。そんなやり取りをしている間にグルグルと腹が鳴り始め、あり得ない程の強い痛みが壮一の下腹を襲う。
出してしまえば楽になれると頭の中では分かっていても、いざとなると羞恥が勝ってとてもじゃないけど出来なかった。
「ひっ… も、いたい……からぁっ!」
それでも何とか足を進めると、遊具が並ぶ場所の向こうにトイレの灯りが見えたから……無意識に、ふらりとそちらへ歩き出そうとした瞬間、強い力で鎖が引かれて芝生の上へと倒れ込む。
「今日の内田さんは手が掛かる……でも、たまにはいいか」
「ぐぅっ……やっ…やめろっ、こんな……おかしいだろ! 」
「まだ悪態吐く元気があるんだ」
どこか愉し気に呟きながら、光希は壮一を担ぎ上げ、低い鉄棒の前まで運ぶと、棒の部分に腹が当たるように細い身体をぶら下げた。
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