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気になる②
仕事が終わり彼方くんを連れて家に帰ってきた。
明日から大変な事になりそうだが、今日は一先ず安心だろう。
「彼方くんは嫌いな食べ物とかある?」
「特にはない」
「じゃあ今からご飯作るからテレビでもみて待っててね」
「はい。どうぞ!」
「…店みたいなオムライスだな」
「結構料理には自信あるんだよー!さ、食べて食べて!」
夕飯を食べたあと彼方くんにお風呂を勧めたんだけど…
「い、いや…大丈夫…」
「だめだよ、入りなさい。服なら貸してあげるし、下着はコンビニとかで買ってきてあげるから」
「で、でも…」
この通り、素直に入ってくれない…
「裸見られたくないのはわかるけどさ…、ね?入ろう?なんなら今出ていくからさ」
そこまで広い家じゃないの脱衣所がない。
だから拒否られているのかも…?
「…ほんとに?」
「うん、どうせ下着買いに行かなきゃだろ?」
「わかった…」
「バスタオルは風呂場の横にあるあれ使って!大丈夫、洗濯はしてあるから!じゃあ行ってくるね」
とりあえず俺は家を出て徒歩5分程のコンビニまで来た。
どうしようか…そこまで時間は潰せないし、彼方くんがとれだけ風呂に時間をかけるかわからない。
あと5分くらいしたら帰るか…申し訳ないけど…
怪我の具合とかも見てあげたいしね
「ただいまー…」
シャワーの音がしているからまだ入っているみたいだ。
とりあえず片付けとかしよう。
部屋を片付けていたらちょうど彼方くんが出てきた。
「っ…もう帰ってきてたのか」
「あぁ、ごめん、びっくりさせちゃったね。」
「いや、もう大丈夫…」
「あのさ、彼方くん。お願いがあるんだけどいいかな?」
「何…?」
「君を助けたいんだ。だから証拠となる君の身体の写真を撮らせて欲しい。」
「証拠…」
「そう。警察に渡すためだよ。」
「警察に…」
「これからの生活のことが心配?」
父親がいなくなり、母親は入院中となれば兄妹の生活が苦になるのは目に見えている…
「違う…。お金は別に…」
「あれ、違うの?」
「俺だけでも生活できる。心配なのは父さんが素直に捕まるか。」
「待って、彼方くんは何かで稼いでるの?」
「まぁ…。だから…警察に話すならなるべくはやくやらないと…」
「そうか…と言うことは写真は大丈夫なんだね?」
「うん」
彼方くんの意外な一面を見れたのはびっくりしたけど、了承は得たので写真を撮っていく事にした。
「あれ、この傷は…」
「あっ、それは…自分で…」
太腿の内側に切り傷のようなものが沢山あった。
これを見られたくなかったのか…
「そっか…つらかったね」
「っ…」
泣きそうな彼方くんを思わず抱きしめてしまった。
「よしよし」
「ガキ扱いするなっ」
「先生から見たらみんなガキだよ」
次の日、校長にも同行してもらい警察に届けにいった。
傷や痣、彼方くんが密かに録音、録画していたものも証拠となり父親は捕まった。
彼方くんが言ってた通り逃げようとしていたみたいだが、思ったよりもあっさりしていた。
「彼方くん、お疲れ様。」
「なんかあっけなかった。」
「これからどうするの?妹さんとあまり仲良くないでしょ?」
「あいつは今回の件で母さんにめっちゃ怒られたらしくて、しばらくばあちゃんちに行くらしい。だからしばらく1人暮らし満喫するわ」
「寂しくなったら先生のとこ来いよ!」
「寂しくなったらな!」
明日から彼方くんが保健室に来ないってなるとなんかつまんないなぁ。
実はちょっとすきだったりして…。
ま、生徒に手を出すほど俺は落ちこぼれてないからあいつが卒業するまでは黙っておくか。
「さ、仕事仕事!」
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