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Your my messenger!
]インターホンが鳴った。張り付いていたデスクから立ち上がった深青は慌てて洗面所へと駆け込み、起きてそのままの寝癖を直す。今日も一歩も家から出なかったが仕方がない。締め切りは待ってはくれない。寝不足が作るクマが痛恨ではあるがこれも仕方がない。音を立てて頬を叩き、インターホンのパネルに駆け寄って応答した。
「あ。すんませーん。お届け物でーす」
今日も明朗な声が返ってくる。いそいそと玄関へと走り、ドアを開けた。
「良かった。深青さんいらした。これ。いつもの所からです」
「ありがとう。…ごめんね、時間が不定期で」
ドアの前にはハーフパンツ(アンダーにスパッツ着用)に制服の眩しいオレンジ色のシャツ、短髪の黒髪が爽やかな青年が爽やかな汗を額に浮かべて立っている。メッセンジャーである彼は今日もマウンテンバイクのような自転車を走らせて我が家に封書を届けてくれた。それがたとえ仕事の催促の手紙であっても、彼のーー宗の顔を見られるのなら致し方ない。深青は儚げに笑い、目を伏せた。
「いえいえ。いつでもお届けするのが俺の仕事ですから!深青さんも…体、気を付けてくださいね?」
ああやっぱりクマが目立つんだ。宗くんに心配されてしまった。眉を下げた顔も可愛いななどと思いながら伝票に印鑑を押す。名残惜しげに手を引っ込めると宗はぺこりと頭を下げた。
「ありがとうございます!それじゃあまた!」
「うん。またね」
ドアが閉まる。制汗剤の香りだろうか。シトラスのような匂いを残して去ったその場に深青は崩れ落ちた。
「ーーか、」
可愛い。
口から漏れかけた言葉を飲み下す。宗の方も若しかすると名残を惜しんでドアの向こうにいるかもしれない。聞かれてしまうと顔を合わせずらくなる。
爽やかな黒髪。ひよこのように立った短髪。その下の小さな顔と大きな瞳。そして制服に隠された逞しい胸板、隠されてない硬そうな二の腕と太腿。瞼を閉ざし、その姿を反芻する。残像が消えないうちにベッドに行こう。仕事はまだ終わってないけど。多分全然間に合わないけど。
有り体に言って宗はタイプだ。だが、顔を合わせるのはほんの数分。世間話をしようにもさほどネタは無い。深青は宗のことを何も知らないのだと思うと年甲斐もなく苦しくなる。これは恋だ。恋だと自覚してしまったのだから始末が悪い。
「ーーあ、」
ベッドに飛び込む。ごそごそと下肢をまさぐりながらふと名案が浮かんだ。
「いいこと考えた」
時間指定のシステム万歳ーー。
降って湧いた名案にニヤける頬を抑えながら深青は枕に顔を埋め、恋する少女のように足をばたつかせた。
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