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春待夜
俺もそれやってみたい、と好奇心の塊のような目でうろうろする君は物心ついた時もその前も後も包丁なんて握ったことはないのだろう。そんな人間だからプロになって然るべきだ。プロになり損ね、毎日台所に立つ僕は思う。
「お前に料理までされたら僕の商売上がったりだから駄目」
顔も良くて脚も長くて投げれば10勝どころか20勝にも届くようなピッチャーで。
そんな宝物のような男に料理させてーー包丁を握らせて怪我でもさせたら違う意味で僕の商売は上がったりだ。
「ケチ」
そしてそんなことになれば、僕は君の側から外される。
それはついでの話なのだけど。
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