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第3話

 昼休憩になり、谷山が倉庫から戻ってくるなり朝霞に助けを求めてきた。あまりにもぐちゃぐちゃになっていて、とても一人では処理しきれないと言うのだ。 「朝霞課長、倉庫かなりヤバいんですよ。見に行ってみたんですけど、もうぐちゃぐちゃですね。端にあった棚が崩れた時に箱の中身が散乱したみたいで。午後からもう一人貸してもらえませんか?」   谷山は仕事がかなり早いタイプの男だ。入社三年目になるが基本的にどの仕事も期日より前に仕上げてくるしミスも少ない。その谷山が朝霞に誰か貸して欲しいと言うのだから、よほどの状況になっているのだろう。倉庫の状況は女子社員から報告を受けてちらっと見ただけだったが、棚の一つの支柱がはずれもう一つの棚に倒れ込むような状態だったのを思い出した。おそらく上の方に載っていた箱の中身が混在しているのだろう。 「じゃあ、遠山に声をかけておくよ。女子社員とお前を倉庫に二人きりには出来ないからな」  朝霞は谷山を見て笑いながら言った。谷山の仕事に関しては十分認めているが、何せ谷山は女癖が悪いと言うか、手が早いと言うか……、とにかく女性に対してはすぐに口説くタイプの男で、さすがに同じ部署の女子社員に何かするようなことはないとは思いつつも、そこは安全対策といったところである。 「課長、さすがに俺もそこら中口説いてるわけじゃないですよ」  朝霞に言われた谷山も、朝霞が冗談を含めて言っていることがわかるのだろう。笑いながら「お願いします」と言うと昼食を取りに出て行った。朝霞は、自分のデスクで弁当を食べていた遠山に昼から倉庫の片づけを谷山と共にやってくれと伝えると、昼食を取る為外へ出た。 「朝霞課長」 「ああ、遠山。どうした?」  ホームページの更新のチェックを行っていると、遠山が声をかけてきた。谷山との倉庫整理を頼んだはずなのに、いったいどうしたと言うのだろう。 「谷山さんと書類整理してて話していたんですけど、倉庫内の書類で保管期限の過ぎている物が多くあるみたいで、それって焼却に回してしまっても大丈夫ですか?あと、昔の社内報とかパンフレットとかも出てきたんですけど、どうすればいいですか?」  書類保管庫には、使っていない過去の書類も保管されている。機密書類は鍵付きの場所に保管してあるから、今回散らばった書類は、基本的には社内の社員育成の資料だったり、過去の社内報や、イベントのチラシ、なんかがほとんどでかなり古いものもあるだろう。ある程度の期間を過ぎている物はこの際、焼却に回した方がすっきりするかもしれない。 「そうだな。谷山に言って、パンフレットやイベントなんかのチラシの古いものは、数部のみファイルしてそれ以外は焼却に回せと伝えておいてくれ。社内報も、同じものは大量に保管しておくこともないだろうから、同じようにまとめておいてくれたら、保管庫もすっきりするだろうからな」 「わかりました。僕と谷山さんで判断できないものが出てきたら、また報告します」  谷山と遠山には悪いが、一度整理しておいた方が後が楽だ。こういう機会でもなければ、なかなか古い書類の処分などすることは出来ないだろう。幸い新人の遠山はそういう雑務も文句ひとつ言わずに行っていくタイプではあるし、谷山もそれは同じだ。朝霞は保管庫の片づけを二人に任せ、ホームページの修正と更新作業に取り掛かることにした。今日のうちに仕上げておくように指示が出ているからだ。

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