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第3話 木霊

 人に疲れて森に住み始めた。  人間なんかコリゴリだった。  裏切った恋人も、弟も。    二人の涙と言い訳は何の感情ももう与えてくれなかった。  二人が身体を絡め繋がり合うところを見た後は、どちらも汚いとしか思えなかった。  信じ愛してきただけに。    恋人は弟のモノを欲しがり腰をふり、弟は恋人の乳首を齧っていた。  中から突かれ、乳首を齧られ、そそり立つそこから白濁をこぼし、恋人は乱れきっていた。  恋人はそうされると喜ぶのを知っていただけに・・・嫌悪した。  弟にもそうさせていたことに。   弟も恋人がそうされることが好きなことをしっていたことに。  二人がずっと自分を騙していたことに。  それが数年にもなることに。  愛していたのに二人とも。  もう、人間をできるだけ見たくなかった。  村に下りる以外では、誰も人と出会わない。  それで良かった。   ここは昔炭焼をしていた人達の小屋で、もう炭を焼くものなどいないと聞いた。  たまに原稿を送り仕事の手紙を受け取り、食料を買うだけだ。  弟や恋人からの手紙は捨てる。  読みもしない。  森に誰もいないのが来ないのが心地よい。    ここには裏切りはない。  だからそれ見かけても放っておいた。  人間ではなかったから。  人間でなければかまわなかった。  モノノケだろうが、あやかしだろうが。  それはたまに小屋の外でチラリとみかけ、樹木の梢にみかけ、樹木の間に見かけた。     人間の体重では折れてしまう樹の上に、しかも立っていたから、人間ではないな、と思うだけだった。   こちらをずっと伺っているよう。  でも気にとめなかった  好奇心からか、ある日それはとうとう小屋の中に入ってきた。  闇に紛れて。  鍵などない戸をあけて。  それはランプの光に怯えもしなかった。  怖さはなかった。  いつ死んでも良かったからだ。  ただ、それを異形ではあっても美しいと思った。  滑らかな光沢のある肌は磨いたマホガニーのようだった。  木目さえあった。  髪は枝や葉だった。  樹なのだ、と知った。    見つめるだけの時間の後、それは去ったが次の日から毎晩やってきた。    ただ、枕元に座り見下ろしてくる。   その目は美しい。  人間のものではなくても。  そして、夜明けに去る。  それが繰り返えされた。  そして気付いた。  「一人なのか?」  それは一人だけなのだ。おそらく。  たった一人、森の中で生きてきたのだ。  一人。  一人ぼっち。  その晩、それに手を伸ばした。  磨いた木のような肌は艶やかで、指先に滑らかで、人間のものではなく、でも・・・暖かさと柔らかさがあった。  細い枝のような髪に隠れた身体は人間に良く似ていた。  美しい青年の身体に。  ただ肌は人間のものとは違う質感と滑らかさで、木の香りがした。  性器もあった。  多少人間とは違っていたが。  触れたなら震え育ったから、同じなのだとわかった。  胸に乳首もあった。  触れたら震えた。  感じるのだ。    乳首に唇を落としても、それは嫌がらなかった。  だから吸って、優しく噛んでみると、身体は可愛く震えた。    怖がりはしていないけれど、慣れていないのがわかった。  吸って、唇ではむと、乳首は人間と同じように尖った。  身体をガクガクと震わせたから、感じているとわかったから、さらにそこを愛してやった。    舐めて、噛む。   吸って、舌で潰す。  可愛い声が漏れた。  不思議そうにこちらを見ていたし、自分の反応に戸惑っているようだった。  怯えているようにも  ただ、触れられることに飢えていることはわかった。  怖がってても逃げない理由もそこなのだ。  欲しかったのはこんな性的な刺激ではなかったのだろうけど。  長く、誰にも触れられていないのだと・・・悟った。  頬や髪を撫でると、無邪気に身体を擦り付けてきたから。    一人なのか、そう聞いても返事はない。 でも本数の異なる指がこちらにもふれてきたからそうなのだと思った。  こちらが触れたようにそれも触れてきた。  こちらを知ろうとするように。  指は触れることに飢えていた。  長く長く一人なのだ。  もう誰もいないのだ。  この世界にただ一人なのだ。  人間とは異なる目を見つめた。  人間のものとは異なる光彩。  でも美しい。  キスをした。   舌は柔らかく、でもそこの味は人間とは異なっていた。  その味を気に入った。   人間ではないからこそ。    戸惑うそれに、教えた。  キスを。  舌をかんで、唾液を交換すること。  キスをしたらそれの性器が勃ちあがったから、そこを擦ってやったなら、可哀想なくらい感じて、達した。  人間のものとは異なる匂いのそれは精液で、木の匂いがやはりした。  舐めてそこを綺麗にしてやったなら、怯えながら感じてた。  かわいくて、また射精させた。  ガタガタ震えて快楽に泣いていた。    ああ、何にも知らないのだ。  裏切りさえ。  愛しくてたまらなくなった。  その時は確かに怯えていたけれど、逃げなかったから、優しく抱きしめて、囁き続けた。  わからなくても、わかってほしくて。  行かないでくれ。  行かないでくれ。  寂しいんだ。  それに言葉が通じたのかはわからない。  でもそれはいてくれて・・・逃げなかったから・・・。  さらにその身体を知った。  触れて舐めて、噛んで吸って。  指で触れて、挿れて。  知りたかった。  知りたいと思った。  後ろの穴も人間のように感じることを知って歓喜した。  人間のように、広がることも。  それが逃げないことをいいことに、その穴の気持ち良さを教え込んだ。  声を上げて感じる姿に興奮した。  舐めて、濡らして、そこを広げながら、そこですることを自分ら望ませた。  自分から腰をふり、欲しがるまで。  それから、自分のモノを挿れた。  とけきったそこは・・・気持ち良かった。    それは泣いたし、声を上げたけれど・・・  中だけで達してくれたから、感じてくれたのだと思った。  中に放った。  自分のモノにしたくて。  涙をなめた。  それも緑の匂いがした。  怖がらせたことを謝りながら、キスをした。    孤独だから。  寂しかったから、耐えてくれたのだと思っただけで愛しくてたまらなかった。    だから、それを愛した。  それが応えてくれるままに。  また入った。  それは、嫌がらなかった。  だから、少しでも感じるように愛した。  気持ち良くさせたくて・・・気持ちよくて。  それはこの身体にしがみつきながら、またイった。  すがる身体が愛しかった。  可哀想に。  誰もいない。  可哀想な。  ああ、なんて愛しい。    それを抱きしめて、またその身体を愛さずにはいられない。  今は幸せだ。  ほとんど人にあうことなく生きることが。  恋人は森に住み、夜毎訪ねてきてくれる。  恋人は裏切らない。  恋人の仲間はもういない。  恋人はもう、誰かと誰かを比べたりなど出来ないから。  自分で良かったのか?などは思わない。  誰にも譲る気はないから。  幸せで幸せに、ここで生きていく  end

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