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初めて使う自分の布団は、時折日に干していたとは言え、湿った様な黴臭い感じがして寝心地は良くなかった。
「今日から?いきなりだね…」
別に寝ると言い出した俺を、保さんは寂しそうにはしていたけれど、引き留める事はしない。
保さん自身、成長した男が狭いベッドに潜り込んで来るのを良しとは思っていなかったのかも知れなかった。
出窓から射し込む月明かりに、目が冴えて眠れない。
保さんの腕で眠る事を知っている体はしっとりとひんやり冷たい布団には馴染んでくれず、うとうとと微睡んでは目を覚ますと言う事を繰り返す。
柔らかな唇に触れたくて…
温かな腕に抱き締めて欲しくて…
幾度も寝返りを繰り返し、闇に溶けていきそうな扉を見詰めた。
獣の瞳の様に月光を含んで光るドアノブが誘惑する。
触れて、回せと…
やはり一人では眠れないと、告げてその布団に潜り込めばいい…と、何かが囁きかける。
「…保さん……」
再び彼の隣で横たわり、また保さんが奥さんの…章子さんの名前を呼ぶのを聞くのか?
保さんが俺を家族とは見てくれていても、そう言った対象と見ていないのははっきり分かっている。
保さんの中には章子さんがいる。
ましてや俺は男で…完全に出る幕はない。
分かってはいても、体はかつてオジサンがそうした様に、保さんにもして欲しいと望んだ。
ドアノブを回す代わりに、自らの下半身に手をやる。
彼のいない寝床が寂しくて、辛くて、まぎらわせたくて、熱い脈動を包み込む。
一度口に含んだモノの味を思い出し、その太さを思い描いて腰を振る。
「ふぅ…、………んっ…、ぁ」
耳を打つ先走りの音…
俺の頭の中では、もう何千回と保さんに犯されていた。
湿気った様な布団に慣れ始めた頃の事だった。
保さんが倒れたのは…
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