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子供は女の子だと連絡が入った。
キャッチボールと言う定番の夢を思い描いていた為、男の子でなくて残念と言う思いと共に女の子で良かったとも思う、同性同士の方が気を引きやすいと思ったからだ。
これで、少しはアキコの干渉が収まれば…
「百合で花束を…」
無難で、まず間違いがない物を選ぶ。
入院には不向きと言われているが、病気と言う訳でもないし何よりアキコの好きな花だ。
少し偏執的ではないかと思える程の好み方を考えると、これ以上喜ぶ物もないのではと思う。
「女の子……か」
名前はアキコがつけるのだろうか?
小五月蝿い向こうの家が口を出すだろうか?
自分に意見を言う隙があるのかどうか…
苦笑して大きな百合の花束を受け取って店を出ようとした時にその花が目に入った。
露を含んだ鮮やかなローズピンク
愛らしさを感じさせる黄色
愁いた様なグリーンを滲ませる白
凛とした気高さを放つ黒
百合の様な直線的な気位の高さではなく、柔らかな情緒を持つその花が心を打った。
「…これは……」
「今日入荷したんですよ」
ニコニコと笑う店員の声は聞こえなかった。
ばら…
「薔薇」
ふと、漢字を思い出した。
随分と難しい字だと思ったが、花に関心のない私はすっかりその事を忘れていたのに…
ソウビ…とも読んだか?
薔子
「ソウコ」
呟いて、しっくり来ずに口を閉ざした。
「いや、ショウコ…」
華やかに咲き誇る薔薇を眺めてそう呟くと、まだ見ぬ娘の顔が見えたような気がして頷く。
「この赤い薔薇を…」
ベルベットの光沢を持つ真紅の薔薇を指差す。
きっと子供は、この花に相応しい娘に育つだろう
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