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 夜は付き合いで食べてくる事も多いせいか、夕飯はアキコとショウコ二人で摂っている。  けれど、もし…  片付いている台所に夕飯を食べた様な痕跡はない。  炊飯器に米が残っていないか探すも、ひんやりとしたそれに食べ物の気配はなかった。 「…」  ゴミ箱の中に、一人分の空の弁当箱。  ぎゅっと抱き締めた頼りない存在は、しきりに空腹を訴える。 「あ…あぁ、ご飯買いに行こうな?」  風呂上りの濡れ髪のままコンビニへとショウコの食べれそうな物を探しにいった。  ざわ、ざわ、とした嫌な思いが過る中、腹を満たして眠る小さなショウコをベッドに残して向かいのアキコの部屋の戸を叩いた。 「あら、お帰りなさい」  寝屋着姿のアキコは、突然の私の訪れに何かを期待する様な顔で出迎える。 「どうなさったの?」 「…いや…その……ショウコの事なんだが…」  そう切り出すと明らかに落胆のような不機嫌さを滲ませて、出窓にどすんと腰を下ろした。  百合が満たす空間へ足を踏み入れると、アキコに絡め取られたかの様な錯覚に陥りそうになる。 「あの子がどうかしたの?」 「今日の…夕飯は、何を食べさせた?」  そう返すとその目に明らかな動揺が走った。 「………」 「オレの事は放っておいてもいいが、ショウコはまだまだ小さくて…っ」  投げつけられた傍らの置物を、寸でで弾く。  ちりめんで作られたそれは軽く、手で払い除けてもなんともなかったが、これがその隣の木造の人形だったらと思うとぞっとする。  アキコは時折そう言う事があった。  何か嫌な事があると激情に任せて行動する… 「っ…何よっ!!1日中居ないくせに!!ショウコは今、なんでもイヤイヤ言って大変なのよ!?好き嫌いして食べさせようとしても食べないしっ!!私が悪いんじゃないわよっ!あの子が悪いのっ」  叫びながら人形に手を掛けようとしたアキコを押さえる。 「まっ…違う、アキコも忙しいのは良く分かってるから。どうだろう?お手伝いさんを雇ってみたら」  な?と重ねる。 「ショウコが扱いに大変な時期なのは分かってるから…」 「…ベビーシッターの方が良いわ」  ぷいっとそっぽを向きながら呟く。

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