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 家事の負担を減らして子供の面倒をみると言う事は頭にないらしい。  もっとも…ベビーシッターを雇った後、家政婦を雇うのにそう時間は掛からなかった…  中学になり、ショウコは台所へ立つ様になった。  残念ながらそのショウコの隣に立つのは母親のアキコではなく、長年家政婦として来てくれている室井さんだったのだけれど… 「そうです。お上手ですよ」 「本当?」  ふぅわりとした柔らかな髪を揺らし、名の通り華やかに育ったショウコは嬉しそうにリンゴの皮を剥く。 「パパ!もうすぐだからね!待っててね!」  今夜の夕食は室井さんに教わりながらショウコが作るらしい。  辿々しい包丁の音を心地好く感じながら新聞を見ていると、リビングの扉が開いた。  薄暗い雰囲気の女が顔を出す。  姿形だけを見れば、子育ても家事もせずにいるせいか若々しく見えたが、年々その陰鬱さは深さを増すばかりだった。 「アキコ…出掛けるのか?」 「友達が食事に行こうって誘ってくれたの」 「………」  昼間から再三、夕食はショウコが作ると言っておいたはずだった。  機嫌のいい昼間は食べると言っていたが、何処かで機嫌を損ねたのだろう。 「じゃあ行ってくるわ」  室井さんに「後、頼みますね」と声を掛けてアキコは出ていってしまう。  ぽつん…と、アキコに声すら掛けてもらえなかったショウコは肩を落としながら綺麗に向いたリンゴを運んでくる。 「残念…だったね」  項垂れた頭を優しく撫でて慰める。  前にアキコが母親らしいことをしたのは何時だったか…  ショウコの入学記念に写真を撮った…あの時が最後だったように思えた。

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