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 どんどん華やかに美しくなるショウコに気後れしながらも、その成長は嬉しいものだった。 「この庭、百合ばっかりでつまんない」 「はは、…百合は母さんが好きな花だから」  いつの間にか塗るようになったピンクのリップの付いた唇をつんと尖らし、ショウコは「私なら薔薇を植えるのに」と呟いた。 「そうだね…ショウコが家庭を持ったら、庭を薔薇一杯にするといい」 「えぇやだっ」 「やだって…」 「私、お父さんとこの家にずっと住む!」 「えぇ?」  小さな子が言う様なその戯れ言に苦笑が漏れた。 「私、お父さんと結婚する!」  ふふ…と笑うショウコの笑顔の明るさが救いだった。  幼い子供が言う延長と思い、穏やかなその時間に胸を満たされる幸せに浸っていた。  母がいるようでいない。  そんな歪な家庭で父娘寄り添って生きていた。 「おとーさんっ」  はいっと差し出された弁当箱を受け取る。 「今日も頑張ってきてね!」  普通ならば妻であるアキコが言うそのセリフをショウコは毎朝言ってくれた。 「はい、いってらっしゃいの、ちゅっ」  弁当箱を受け取る際に屈むと、頬に柔らかな唇が触れる。  小さな頃からのスキンシップの一環だったが、それはショウコが高校になった今も続いていた。  世間一般では父を嫌悪し始める時期だと言うのに、ショウコはその片鱗すら見せない。  それはくすぐったくもあり幸せでもあった。  けれどそれは、ただただ…歪にゆがんだ家族の形が軋む音に過ぎなかった…

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