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あの日の事を思い出すと、今でも身がすくみ、どうしょうもない不安と恐怖に屈しそうになる。
無駄に子供を探していた間に行われた惨劇を、どうして止めることが出来なかったのか……
血にまみれて転がる体。
原型を留めないほどに刺された腹部…
自らの刃で絶命したアキコの隣で息絶えたその人の名を、声が枯れても尚叫び続けた…
葬式の記憶も何もかも…全く覚えてなかった。
ふと気づけば、白い骨壺を抱えて百合のステンドグラスに向かい合っていた。
噎せ返る…百合の臭い。
温もりの無い、冷たさだけのショウコに囁く。
「ショウコ……薔薇に…しよう。こんな…」
こんな花なんて!!
投げつけた百合の花瓶はガラスにぶち当たって共に派手な音を立てて砕けた。
落ちてくるガラス片を見ている内に、百合の壁紙が目に入り、それも力任せに引き剥がした。
アキコが気に入り、その花一色に染まる全てが憎かった。
カップを叩きつけて踏みにじり、皿を砕いて行く。
「いらないっいらないっ!!こんなモノなんかいらないっ!!」
近所が不審がり、警察が止めに入るまで全てを薙ぎ払い、壊し続けた。
抱き締めたその骨壺に温もりはなく…
後を追う勇気もない自分は、この惨事を引き起こした張本人として泣く事も出来ず…ただ、ただ、残された時間を無意味に消費するしか道はなかった。
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