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薔薇のステンドグラスが入り、庭に薔薇の苗が植わり、この家から百合の臭いがなくなり始めてやっと眠れるようになった。
浅く、ともすれば外を走る車の音にも起こされる日々だったけれど…
たった独りでは広すぎるこの家を、処分してしまおうかとも思いもした。
けれどショウコの育ったこの家を、お父さんとずっと住みたいと言っていた家を手放す気にはなれなかった。
ショウコの部屋だった場所に入り浸り、日がな一日その残り香を探す日々もあった。
つたない字で、けれど真剣に書かれた日記を見付けた時は、そこに綴られる自分への告白に泣くばかりだった。
三人で暮らしたい
そう繰り返される三人がショウコと自分、そして子供の事を指しているのははっきりとしていて…
けれどその時の私は、何処かに連れ去られた子供を探すよりも、独りショウコとの思い出に浸っていたい方が優先だった。
はっきり言ってしまえば、ショウコのいない家族に興味はなかったのだ…
やっとそこと向き合う気持ちになり、長く鍵を掛けていたその部屋を開けた。
途端溢れだした百合の香りに、喉が震え、奥から酸いモノが溢れそうになる。
しかし、いい加減ショウコの思い出のある家にアキコの物を置いて置くと言うのも限界だった。
ごみ袋に、片っ端から投げ込んでいく…
これはあの時にアキコに買った…
これはアキコのお気に入りの…
そんな思い出や感情は一切沸かない。
百合で溢れ返るその空間に悪態をつきながら事務的に全てを投げ入れ、壁紙に目をやった。
それを剥がすために掛けてある額縁に手を掛ける。
────かたん
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