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 百合の絵を動かした瞬間にこぼれ落ちたそれを咄嗟に拾い上げると、思いの外若い自分と目が合った。 「───あ?」  若い自分と……同じく若いアキコ。  写真の中の着物は、代わり映えもせずやはり百合で… 「ああ、…見合いの時の写真か」  ぎこちない二人の距離を見て苦笑する。  その写真もごみ袋へと投げかけてはっと指が強張った。  そう…  見合いの時だ… 『貴女には百合がよく似合いますね』  そう、社交辞令の一つとして誉めた。  たった一言、そう…誉めた。  指先の、笑ってられた頃の写真が震える。 「オレが、言ったからか…」  アキコのあの百合への執着は…  自分が昔…そう言ったから?  写真の裏に、綺麗な文字で一言添えられている。  ───保さんと、初めて出会った日の記念に。良い夫婦になりたいと思います───  すぅっと胸が冷える。  視界が揺れる気がして膝を付いた。  アキコは、アキコなりに…きちんと夫婦と、家族となろうとしていたのかもしれない…と。  遠退け、邪険にし、いつの間にか家族から押し出したのは……自分だ。 「あ……っ…」  ガタガタと震えが走る。  この独り遺されると言う結果をアキコのせいにして、納得していた心が震える。  アキコが全て悪いんだと、責任を押し付けて被害者になっていた考えに亀裂が走る。  死んで尚絡み付く様な百合の臭い。  そう、そうさせてしまったのは……自分だ…

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