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思いに応えるのは簡単で…
自分を父とも祖父とも知らない楷は、私をただの男と見ているのだろう。
無邪気な顔を見せてくれるようになった楷に、真実を話す勇気はなかった。
この小さな…けれどどこまでも重い存在が再び手から離れて行ってしまうかもしれないと、そう思うと口を噤むしかなかった。
思えば、それは綻び。
偽の世界に亀裂を入れた楔に思える。
日々大きくなり、世界を広げていく楷が、後どれだけここに居てくれるのか不安だった。
夜毎布団に潜り込んでくる行為を、いつ止めると告げられるのか恐ろしかった。
手放したくない…存在。
遠縁の…とは言っても血の繋がりはないと思っている楷を引き留める術などない。
血の繋がりがあると思っていればこそ、出れば帰ってくることもあるだろうが…
成長するに従って、置いていかれるのではと言う恐怖は常にあった。
もういっその事抱いてしまい、そう言った関係で彼を繋ぎ止めておくしかないのではと思った事もあった。
実際、あれは正月で…めでたさに浮かれて彼にお屠蘇を飲ませた事がある。
僅かな量だったが初めて飲むそれに酩酊したのをいい事に、その体にそう言う風に触れた。
細い首元に口付けを落とす。
服の中に手を差し入れ、薄い胸の頂を探した。
微かに開けられた唇を抉じ開け、舌を差し込むと先程までつついていたイクラの味が微かに漂う。
起きる気配を微塵もさせない彼のシャツを捲り、スウェットをずらし、その体を眺める。
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