45 / 83

 彼はたった独りだから。  私がいなくなれば独りぼっちになってしまうから。  ……  せめてその心の支えになるように、言葉を遺したかった…  今わの際に、 「───楷、愛していたよ」  泣きじゃくる君への愛しさを、ショウコへの愛だと勘違いしないでいれたなら…  君をもう少し幸せにできたろうか?  そしてショウコは…彼を愛しく思うことを赦してくれるだろうか?  ───ごめんな  必死に伝えたくて口を動かすけれど… 「ごめんな。ショウコ」  楷が愛しい  ただ、  ただ、  愛しい…  願わくば、全てを塗り込めたあの小さな箱庭で、薔薇に埋もれた彼が幸せであるようにと…  それだけを願う… END.

ともだちにシェアしよう!