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けれど保さんの死後、葬式で一度見かけただけでその後その名前が接触して来たことはない。
だからすっかり、
忘れ去られているものだと思っていた。
いや、思い込みたかった。
「―――今日は、この家を見るために来ました」
「……はい」
保さんが亡くなってしまえば、保さんの妻である彰子さんの実家である三条家と俺の繋がりなんてない。
いや、実際には俺は彰子さんとその娘である薔子さんの血を受けているのだから、全く関係がない訳ではない。
けれどそれは誰も知らないことだ。
保さんが黙ったまま旅立ったように…
俺も話す気はない。
「不愉快かもしれないが、お義兄さんがこの家を君に譲ったとは言え、ここは元々三条家のものだ。おかしな使い方をされていては困るのでね」
その声が含むものは…
軽蔑?
幾ら保さんが引き取ってくれたとは言え、俺の素性ははっきりしないことになっている。
実際は父も母も、分かってはいるが…
「分かりました」
事を荒立てる必要はない。
見られて恥ずかしい生活はしていない。
かつての保さんがそうだったように、薔薇に囲まれてひそりと暮らしているだけだ。
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