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 痛みに体を傾ぎながら廊下を歩いていると、保さんの部屋の前に立ち尽くす彼がこちらを向いた。 「……もう、いいでしょう  俺が売春をしてないって、分かったでしょう」  一歩進むごとに嫌な痛みが背筋を駆け上がる。  幼い頃に体験した苦痛を、この年になって再び知る事になるなんて… 「………」 「見送ります。お帰り下さい」  先導するように階段に視線を向けると、硬質な瞳が俺を見つめる。 「    血が出たからと、男娼をしていない証拠にはならない」  呻くような声に、頭の中が真っ白になった。  この人は一体、何がしたいんだ? 「     …」  この人に、何と言ってやればいいんだ。 「して…   してません  」 「しばらく、君の生活を見させてもらう」 「なっ…」  思わず床に座り込んだ俺に、上から声が投げられる。 「その様子じゃ生活もままならないだろうしな」 「だっ…誰のせいだと…っ」 「だからその責任を取ってやると言っているんだ」 「そんな責任、取って欲しくありません!」  金切声で言い返す言葉に怯んだかに見えたのは一瞬だった。 「君に決める権利はない」  彼はそう言って俺を上から見下ろした。

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