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 そろそろ二次会に行こうかと言う話が出始めた頃、店の暖簾をくぐって見知った顔が覗いた。 「あー…」  むっつりとした顔が俺を見つけて近寄ってくる。  手でちょっと待ってと合図してから、武井部長に暇乞いを告げた。 「お先に失礼します」 「大分酔ってるけど…大丈夫か?」 「はい。迎えが来ましたから」 「迎え?」  言ってしまってから、いい年して迎えなんて…と思ったが、武井部長は俺の後ろに視線をずらしてから「ああ」と笑った。 「それじゃあ、気を付けて」  ひらひらと手を振る武井部長に頭を下げて、他の人達にも声を掛けてから座敷を降りた。 「あ…」  ふらりとよろめいた俺の腕を忍さんが掴んで支えてくれたから、転倒することはなかったけれど、酔いの回った俺はその腕にしがみつかなくてはならなかった。 「すまない。早すぎたか?」 「え、いえ…酔っぱらってきたので、ちょうどよかったです」  俺をしっかり支えてくれる腕にほっとしながら歩き出す。 「一人では歩けないのか?」 「あ、す、すみません」  自然ともたれ掛かっていたようで、いつのまにか距離が縮まってしまっていた。  慌てて離れようとするが足元が怪しいせいかよろめいて… 「離れなくていい。しっかり掴まっていなさい」  よろけて壁にぶつかりそうになった俺の腕を忍さんがまた掴んで自分の方へと引き寄せてくれた。  ほわりと感じた人の熱が怖くないと感じたのは、保さん以来だった。

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