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 リビングのソファーに腰を下ろすともう駄目だった。  体中が重くて怠くて…  瞼なんて開いているのか閉じているのか分からないくらいで…  「はぁ」と忍さんの溜め息に「すみません」と返したのも声になったのかどうなのか。  とりあえず面倒を掛けないようにと、部屋に向かうために立ち上がった……はずが、前のめりに倒れて忍さんに抱きしめられていた。 「  す、み」  はくはくと口は動いたはずだったが、視界が暗転した俺にはそれを確認することはできなかった。  随分と、長い間の習慣だった。  保さんと同じベッドに…  幼い内ならばまだ許されるだろうが、高校卒業間近までそうやって眠っていた。  首の下には腕があった、温かい体に足を絡めるようにして眠る。  人に触れられるのは怖くて怖くて仕方がなかったけれど、保さんとはずっとそうしていたかった。  温かで…  温かな…  ―――保さん  最後まで俺の温もりにはならなかったその温かさが好きだった。  俺に、家族になろうと言ってくれた人。  俺に、人間らしい生活を教えてくれた人。  俺に、大丈夫と言ってくれた人。  俺に、孤独を思い出させた人。 「ど して、」  どうして置いて行った?  どうして何も言わずに逝ってしまった?  どうして、最後に名前を呼んでくれなかったのか…  長く傍に居たけれど、貴方の中に俺は残れなかった  ――――そう、俺は、誰の中にも残れないんだ

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