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「 ぅ」
痛んだ鼻の奥と、目尻の熱さで涙が流れたのが分かった。
けれどすぐにそれは拭われて…
優しく優しく背中をとんとんと叩かれ、俺はそのぬくもりに擦り寄って久しぶりにゆっくりと眠る事が出来た。
寝返りを打つのが酷く不自由で、重い瞼を仕方なく開いた。
「――――あ」
寝返りのつっかえとなっていたのは忍さんだ。
狭い、男二人で寝るには狭すぎるソファーにぎゅうぎゅうになりながら横になっている。
「え、ええ!?」
飛び起きるとその振動で目が覚めたのか忍さんが小さく呻いた。
眩しそうに眉間に皺を寄せ、腕で目に影を作ってから辺りを確認する仕草をする。
「起きたのか」
「あ あの…」
「体中が痛いな」
体を起こそうとする気配がしたのでソファーから降りてラグの上に座り込む。
忍さんの服装は昨日のままで、昨夜倒れそうになった俺を支えてそのままソファーで寝てしまったのだろうかと想像できた。
「すみませんでしたっ」
「………」
「迎えに来てもらうだけじゃなくて…」
迷惑をかけてしまったと言う罪悪感に顔が上げれず、膝の上で拳にした手に視線をやる。
「気にしなくていい」
え…?と返す俺を尻目に忍さんは肩を回しながらキッチンの方へと向かってしまった。
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