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『よし!これはちょっとお邪魔して問い詰めちゃおうかな?』
「そんなぁ」
『大事な楷くんに春が来たかもしれないのに!』
大事、と言われると、ムズムズしてしまうのだけれど…
「でも、来てくれると、嬉しいです」
『私もよ!いつなら空いてるかしら?』
「ええっと…次の休みが…会える日はー…」
暗いままの玄関の電気をつけてスケジュール帳を引っ張り出す。
電話の向こうから聞こえてくる日程に合わせながらチェックをして、二人ともちょうどいい日を決めた。
『デートの日だからカレンダーにハート描いちゃおうかしら』
「え?じゃあ俺も手帳にはでっかいハート描いておきますね!」
カチカチとペンの色を入れ替え、細い赤色の線でその日にぐりぐりとマークを書き足す。
ちょっと先になってしまうが、その方が室井さんに見てもらっても恥ずかしくない程度に掃除もできて好都合だ。
「じゃあその日に!」
『楽しみね』
「はい!俺も楽しみです!家中ピッカピカにして出迎えますね」
『じゃあぜーんぶチェックさせてもらおうかしら?もちろん、お風呂もね』
「お風呂も?ピッカピカにしておきます!会えるのを楽しみにしてます!」
くすくすと笑い合い、もう一度日にちの確認をしてから通話を切った。
熱くなった携帯電話をポケットへと直しながら、その日は保さんの思い出話が出来るのだと思うと思わず頬が緩んでしまう。
あの頃も今も、俺と保さんに一番近かった人は室井さんだ。
室井さんに、忍さんをなんて説明して紹介しようかと思うと頭の痛い話だが、久しぶりに会える…と言う約束が胸を躍らせる。
「―――――ずいぶんと、ご機嫌だな」
「え?」と緩んだ顔のまま見上げた忍さんは…
「ぁ…の……」
俺の身を竦ませるには十分だった。
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