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 けれど、言わなければ…  この人には、これ以上軽蔑されたくないから! 「む…室 井さん、はっ保さんの、雇っ…ていたっ   家政婦さ ん、なんです」  忍さんが俺を軽蔑しているのは分かっている。  でも、それをそのままで終わらせなくない、今すでに軽蔑されているのならせめて、これ以上酷い誤解を持たないで欲しいから。  そう、願ってしまうようになったから… 「家政婦の、お おばさんです」 「………」  俺を押さえつける手の力は緩まらなかったし、俺の体も震えたままで情けない状態だったけれど、手を伸ばしてさっきまで室井さんと話していた携帯電話を握り締めた。  履歴を呼び出して見せ、通話時間の表示してある画面に忍さんの視線が動いたのを確認してから手探りで通話のボタンを押す。  小さく響く呼び出し音がいつまでも続き、見続けるかつての過去の夢の続きを見ている気になってくる。 『―――楷くん?どうしたの?やっぱり先約があったの?』  先程まで話していたせいか、室井さんはいきなりそう尋ねてきた。  電話から漏れる年配の女性の声を耳にした忍さんは、見開いていた両目に明らかな戸惑いを見せてふらりと俺の上から体を起こした。 「  あの、一緒に晩御飯とか、どうかなって。た、食べたいもの、ある?」 『あら?楷くんが作ってくれるならどんなものでも楽しみだわ!』 「じゃ あ  こっちで考えるね」 『きちんと自炊してるのか、掃除と一緒にチェックしますからね』  ぶるぶると拳を震わせている忍さんにその言葉は届いたのかは分からなかったけれど、携帯電話を置いた俺の目に映る忍さんの感情は凪いでいるように見える。 「………」 「すま……」  俺に告げようとしたらしい謝罪は途中で途絶えて最後までは聞けなかった。  代わりに崩れるように項垂れた忍さんの微かな嗚咽が耳を打つ。

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