この人は、どうして泣くんだろう 　この人は、どうして怒ったんだろう 　この人は、どうして食事を作ってくれるんだろう 　この人は、どうして迎えに来てくれたんだろう 　この人は、どうして俺に微笑みかけてくれるのか… 　どうして、俺の事でこんなに動揺してくれるのか 「………知っている事だとは思うんですが、俺は施設で育ちました。最初に引き取られた先で…」 　まだ、押さえつけられた時の苦しさを覚えている。 　裂かれる恐怖も、逆らえない屈辱も、いつしかそれに慣れて快感を感じ始めてしまった苦しさも、忘れきることが出来ないままに生々しく内にある。 　閉じ込める事しかできない記憶が、言葉にすると僅かに顔を覗かせたような気がした。 「そこの養父に、犯されました」 　眩暈がしそうだった。 　保さんが何年もかけて柔らかく包み込んでくれたそれを今更引き出して、この先耐えられるのだろうかと言う不安はあった。 「そちらで快楽を得るように開発されました」 「そ、　　　そんな言い方……」 「すみません。…他に言い方が思いつかなくて」 「………」 「養母が気づくまでの間、ソレは繰り返されました」 　言葉を垂れ流すしかできない俺にできるのは、感情を押さえつけてこの言葉を吐ききるまで混乱して泣きわめかないようにすることだけだ。 　できる限り硬質な声で、できる限り客観的に、