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「そのせいか俺の恋愛対象は男ですが、三条の家が思っているような関係は保さんとの間には一切ありませんでした。保さんは飽く迄も奥さん一筋の人でしたから」 「………」 「名誉のためにも言います…保さんは、奥さん以外愛さなかった」  幾度となく胸の内で呟いた言葉のはずだったのに、耳に入る声でそれを呟くと心が軋むようだった。  見上げた階段のステンドグラスに咲き誇る薔薇を見上げて、幸せそうに逝った保さんの姿を想う。  保さんは、そう言った意味では俺を愛してはくれなかった。  滲み始めた視界を誤魔化すために、閉じてからゆっくりを首を振った。 「もう、十分でしょう?俺は男娼じゃないし、ここで何一つやましい事なんかやっていない」  忍さんも、そう言った意味では俺を見てくれることはないだろう。  だからせめて、いかがわしい事などはしていないのだとはっきり知ってもらってからこの家から出て行って欲しい。 「だから、貴方がここにいる理由はもうない。もう、こ こから……出て、行ってください」  鞄を引き寄せ、未だに拳を震わせている忍さんを見る。   明日にはその姿を見ることもないのだと思うと、初日はそこにいるだげで恐ろしくて消えてしまいたくなったのを思い出した。  あんなに恐ろしいと思った人なのに… 「ここに、いる理由は    君を  」

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