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第6話 君にだけ

 愛する人に優しく出来ない。     酷い言葉を吐き捨て、酷い態度をとってしまう。  傷つけてしまうのは素直になれないから。     でもとうとう青年は愛する男に捨てられた。    「もう無理だ」   苦しげに言って去っていく男を追いかけられなかった。   素直になれないから。   でも愛していた。  愛していた  男が他の人と付き合うことになったと聞いてたまらなかった。     愛していなかったことなど一度もなかったのだ。  あの人は僕のもの。  青年は優しく微笑み、甘く囁き、  男の相手の気持ちを自分に向けた。   男はまた深く傷ついた  そんなに俺が憎いか。   愛しても冷たく突き放し、誰かを愛そうとすればその人を奪う。  傷つき苦しむ男の言葉に胸が痛む。  違う違う。    愛している。愛している。  そう言いたいのに青年はいえない。  笑顔は出ず、冷たい言葉を吐き捨て、酷い態度をとる。  男以外には優しく出来るのに   憎い。  憎い。  男は叫ぶ。  愛することも離れれることも許されないなら、憎むしかない。  そう叫ぶ    青年は苦しむ。  愛してる、愛して欲しい。  でもそれさえ言えない。  でも自分を愛してくれる男を傷つけてしまうよりは、自分を憎む男に冷たくする方が良いと思った。  憎まれる度、苦しくても、  冷たくしてしまって苦しくなっても  その夜、男は憎しみにまかせて青年を抱いた。  そう、行為自体は優しかった。  愛されていた時のように。  ただ冷たい軽蔑と、憎しみに満ちた言葉があっただけ。  青年は触れられただけで感じた。  愛する人の指に飢えていたから。    身体だけは求められる。  与えられる。  言葉では何もしめせなくても。  男の唇を求め、男の身体を夢中で愛する。  愛しているから蕩けてしまう。    男の性器を咥えて育てるだけで、それが喉の奥で放つものを飲み干すだけで、何もしなくても達することが出来るほどに男を愛してる。  それを軽蔑した冷たい目で見られた。  お前はバカにして憎んでいる男にでもそんなに乱れるのか。  淫売。  冷たく刻まれる声。  蔑む声に心を冷やし、でも愛する男のモノを自分から脚を広げて受け入れた。  身体の中に愛する人を感じ、青年はその行為に溺れた。  灼熱のように熱いソレに擦られ、もっと欲しいと求めた。  愛してくれていた時と同じように突き上げられた。   ただ、今は求められているからではなく、怒りから。  最悪だ。  お前は最低だ。  好きでもない嫌いな男でも、お前には同じなのか。  男は冷たく吐き捨てる。  心からの憎しみをこめて。     愛していたよ。  愛していたとも。  少しは愛されていたと思っていたよ。    壊したくなるほど、愛していたのに、今は本当に壊したい。  焼け付くすような、貪るような抱き方は今は憎しみから。  でも同じ熱さで愛する人は抱いてくれる。  憎しみからだとしても。  愛してる。  青年は思う。  言えない。  傷つけるから言えない。  愛しているのに傷つけるなら、憎んでいて傷つけていることにした方がマシ。  男は青年を憎むことができる。  愛しているのに酷くしてしまう自分とは違って。  ごめんなさい。  ごめんなさい。  言えない言葉を閉じ込めたまま、青年は憎しみと軽蔑の中、泣きながら達した。  男は青年を憎み、傷つける。  青年は冷たい言葉や酷い態度を男に相変わらずとり続ける。   でも憎しみに守られ、もう男は傷つかない。  青年を憎み、傷つけるだけ。  たまに二人は寝る。  憎しみから男は青年を抱き、青年はそれを楽しむふりをする。    そう、今は傷付くのは青年だけ。  青年は男以外の全ての人に優しく微笑み優しい言葉を囁く。  心の中で血を流しながら END

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