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第5話
その夜は全く眠れなかった。
涙が止まらない事があるんだ。
君に何をしてあげたらいいのか、全く答えが出ない。
連絡をすることも出来ない。
言葉が浮かばないんだ。
君の事を考えると切なくて切なくて。
でも今は、君の気持ちを想像するとゾッとして、それが苦しくて仕方ない。
もし、立場が逆だったら?
男にそんな事されるなんて、どうしても想像が出来ない。
ここは、高校なんだ。しかも共学。そんな場所でそんな事件が起こり得るのか?
正樹の勘違い?いや、正樹は確実に怯えてた。
暴力をふるわれてたなら、きっと先生に報告するなり僕達に言うに違いない。
性的虐待だったから、躊躇したんだ。
そして誰にも言えずに苦しんだ。
何となく正樹の気持ちが分かる気がする。
目の前の出来事から目を背けたかった。
「幸治が先輩が殴られてる!」なら言えたかもしれない。
「幸治が先輩にレイプされてる!」はどうだ?
自分自身がパニックになって、別の恐怖に襲われそうだ。
何より途中で救えたとしても、そんな行為をされてたことを、先生や他の生徒にバレてしまう。
こんな複雑な事件が学校で起きていいのか?
いや、冷静になればこんな考えが浮かぶが、僕は何より君の体や心を傷付けた犯人が憎い!
僕の大切な君を犯した奴らを許せない。
複雑な気持ちが入り交じって頭が狂いそうだ。
嫉妬。憎しみ。悲しみ。
そして、今君は何をしてる?君の気持ちはもっと苦しいに違いない。
君を思うと僕は、僕は。
どうやったら君は楽になれる?
いや、どうやっても楽になれるはずがない。
性的虐待を受けた子供たちはずっと苦しむんだ。
君もきっとずっと苦しむに違いない。
明日なんて声かけたらいい?
どうやって話しかけたら、君は楽になれる?
君はメシ食ってますか?眠れてますか?
僕は必ず君を救う。君の心を楽にしてみせる。
君の笑顔を取り戻す。
そして今まで通り君と過ごすんだ。
必ず。必ず。
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