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第6話

次の日僕は幸治を見かけて靴箱まで走った。 「おはよ」 満面の笑みで笑いかけた。 幸治は目を泳がせながら 「おはよ」 と力無く返事をしてくれた。 すぐ、歩き出す幸治に僕は、 「ちょっと待って」 と声をかけ腕を掴んだ。 幸治は咄嗟に僕の手を力いっぱい振り払った。 その瞬間、幸治の目がものすごく怯えてることに気づいた。 ビクッとしたその体は、いつもより弱々しく儚げだった。 「あ、ごめん…」 幸治は気の毒なくらい目を泳がせながら僕に謝った。 涙ぐんだその目は、怯えきっていた。 「話がしたいんだ。ちょっと来て」 僕は動揺を見せないように、落ち着いて言った。 そして、少し幸治から離れた。 僕は先に歩き出して、しばらく離れて幸治が 付いて来た。 授業に遅れて構わないと思った。 屋上で2人きりになった。 僕はゆっくり幸治に近ずいて、ゆっくり話しかけた。 僕の行動が幸治にどんな恐怖を与えてるか想像は出来ない。 だけど、なるべく君に恐怖を与えないように一定の距離は保った。 「正樹が見てたって」 幸治は目を大きく見開いた。 「え?」 「幸治、3年に何か酷いことされたんだろ?」 幸治は僕の目をその見開いた目でじっと見た。 「誰にやられた?」 君は答えなかった。 「何されたの?」 残酷な質問なのは分かってる。 やはり答えはなかった。 幸治の目がゆっくり僕から離れて下を向き、しばらくすると真っ赤な瞳から1粒の涙がこぼれた。 「言いたくないのは分かる。だけど、答えて欲しい」 僕はまたゆっくりした口調でソフトに話しかけた。 「3年のサッカー部の誰?」 「…」 「ゆっくりでいいよ。ゆっくり答えて」 僕は待つことにした。 20分くらいしてからかな、幸治の口が動き始めた。 「靴箱に手紙が入ってたんだ」 力無いそのか細い声はそう答えた。 僕は頷きながら、次の言葉を待った。 「体育館の裏で待ってる。大切な話があるからって」 「うん」 「そして、行って見たら目の前に先輩が1人居て、手招きするから行ってみた」 「うん」 「そしたら後ろから口を急にふさがれて…」 声は震え出し、涙声だった。 「うん」 「後は、3人いたみたいで、みんなに抑え込まれて…」 「…」 「逃げられなかったし、暴れても遅かった…」 幸治が膝を付いて床に落ちた。 そうだよね。涙我慢しても出ちゃうよね。 僕は幸治に触らないように、近くで一緒に泣いた。 傷ついた君を目の前にして、涙が止まらない僕がいた。 そして幸治も人に知られたくない話をしてしまった事を悔やんだかもしれない。 でも、僕には本当の事話してくれた。 勇気がいっただろうに、君は僕に話してくれた。 ありがとう。本当にありがとう。 僕は必ず君の心を救ってみせる! そして密かに復讐する事を誓った。 僕の大切な君を傷付けた、愚かな奴らを。 1時間目は2人きりで屋上で泣いた。

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