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第8話
僕は部活を休んだ。
茜ちゃんと幸治と3人で帰ろうと思った。
何とか守らなくては。
「一緒に帰ろう」
幸治に言った。
幸治は頷いた。
校門のところで止まると、
「今日はいいんだ」
と幸治が言った。
「いいとは?」
「茜とは帰らないから」
「茜ちゃん用事?」
「…うん」
「そっか」
そう言って2人で歩き出した。
でも、少ししたら走ってくる足音がした。
振り返ると茜ちゃんだった。
「用事終わったの?」
僕は茜ちゃんに尋ねた。
「用事?私が?」
茜ちゃんの顔色がおかしい。
今にも泣きそうな顔してる。
「幸治」
僕は声をかけた。
幸治は答えなかった。
「待って!」
茜ちゃんがヒステリックに幸治に言った。
僕はびっくりして茜ちゃんと幸治を交互に見た。
茜ちゃんも一瞬叫んだものの、ハッとして一瞬間を置いた。
それから、
「なんで別れなきゃいけないの?なんで急に私の事嫌いになったってLINEしてきたの?」
僕は幸治を見た。
幸治はしばらく間を置いて、
「悪いけど、もう好きじゃない」
そう言った。
僕は全てを悟った。
幸治は今回の事件で想像を絶するくらいの屈辱を受けたんだ。
男として人として全てにおいて、自信を失った。
もう君には余裕がないんだね。
レイプって女でも男でも、心と体を凄い凶器で傷付けられる様な暴力行為であって、泥沼に落とし入れる犯罪だってことだ。
君の心の叫びは僕の想像を絶するものだった。
君の苦しみは味わったものにしか分からないものなんだ。
大好きな茜ちゃんとそばにいたら、彼女を傷付けるかもしれない。笑顔も見せられないだろう。
何より守れる自信もなくなったに違いない。
そして、そんな目にあった自分を見られるのが恥ずかしくてたまらないに違いない。
ひょっとしたら、裏切ったくらいに感じてるのかもしれない。
僕は茜ちゃんに何も言ってはあげられない。
幸治が茜ちゃんを遠ざけたい気持ちが何となくだけど、分かった気がする。
僕も茜ちゃんから目を逸らして、幸治の後を追った。茜ちゃんは鼻をすすりながらしばらく付いて来ていたが、しばらくしてから足音が止まった。
茜ちゃんは幸治に嫌われたと傷ついてる。
分かってるけど、僕は茜ちゃんに何も言えない。
僕は幸治の気持ちが分かるから。
1番辛いのは君なんだ。
茜ちゃんが嫌いなわけなんかあるはずもない。
それでも一緒にいることを止めた。
それだけ幸治には、耐え難い出来事だったんだ。
呼吸をするだけで精一杯なくらい、君には余裕なんかなくなってしまってるんだね。
僕は君の気持ちを理解してたつもりだったけど、到底想像には及ばないほど君の精神状態はおかしくなってしまってることに僕もやっと気が付いたんだ。
本当にごめんよ。
必ず君の心の傷を癒してあげる。君を守る。
だから神様僕に時間を下さい。
君と僕のために時間を…。
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