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第9話

僕は夜通し考えた。 君の復讐を成し遂げなければ。 警察に届けたところでどうなるのか? 証拠は? 女の子だったらまだしも、男の場合はなんて説明するんだ? 女でも男でも性的虐待に付いてそんなデリケートな内容を警察はどんな対応をする? もし君を警察に連れて行き、事細かに内容を説明させ、それを聞くのも警察官とはいえ1人の人間。 それぞれ対応の仕方も違うだろう。 しかも君は男だ。 それに対してどういう態度を相手は取るのか? 証拠って何? 証拠は?って聞かれたら? 相手を見つけたとして、そいつらが本当の事を言うのか? そもそもあんなに傷ついた君に、他人の前で事件の一部始終を話せと僕は言えるのか? 僕が 言ったとしても君は話すのか? 絶対に無理だ。 レイプされた女性達の大半は、届けを出さないと聞いたことがある。 多分それはみんな傷つけられたと同時に、人には話したくない、許せないより先に知られたくない方が勝つほどの屈辱的な羞恥心が働くのだろう。 人には絶対知られたくない秘密。 赤の他人になど、事細かに話せるはずもない。 もちろん知り合いや家族、友達恋人に知られるくらいなら、口を閉ざして諦めた方がマシだと感じるような悪夢に違いない。 それを利用して奴らは犯罪を繰り返す。 どんなに傷付けようが、どんなに痛めつけようが、性犯罪を犯すやつは快楽を求め、相手の気持ちなど考える事すらしないのだろう。 幼児に対する性的虐待に至っては、少女少年を殺害することもよくある話で、性犯罪を犯す人間はクズだ。 最近は実の親が性的虐待をすることもあると聞く。 現代は恐ろしい人間が育つ世の中なのだ。 やはり警察は無理だ。 となると、君の復讐をする道は1つ。 直接奴らに危害を加える。 復讐は何も生まれないなどと、よくサスペンスドラマで有能な警察官が言ってるセリフだが、被害者の無念は殺人や障害ならまだしも、性犯罪で一体何をしてくれると言うのか。 泣き寝入りしてる被害者がいるから、そんな事言えるんだ。 もちろん殺人でも障害でも、犯人が捕まったからと言ってその刑期は被害者が納得するだけのものなのだろうか? どちらにせよ性犯罪は当人が犯罪者と関わるには重すぎる内容だ。 しかも裁判に立たせるなど、被害者をなんだと思ってるんだ。 犯人と赤の他人と知り合いの前で生々しい話などしろと言う方がおかしいじゃないか! だからみんな諦めざるを得ないんだ。 性犯罪の裁判。なんて残酷な仕組みなんだ。 その前に警察に届ける時点でみんな挫折するんだ。 もっと性犯罪について見直すべきだ。 世の中狂ってる。 考えれば考えるほど、僕は犯人を憎む気持ちが膨らんだ。 やはり復讐しかない! 君はこの事件で根こそぎ心をえぐられた。 そして、その君を見て僕の心もえぐり取られた。 奴らを許してなるものか! 命を奪うまではしないが、奪われた方がマシだったと思わせてやる! そうだ。この国は性犯罪には優しい。 命を奪われる事と体を奪われる事どこが違うんだ? 命さえあれば。みんなそう思うかもしれない。 だが、性犯罪の被害者はその後素晴らしい人生が待ってるのか? 肉体関係が築けなくなって、異性と付き合う事すらできなくなった。 そういう被害者の声を聞いたことがある。 きっと被害者はみんなそんな無念な気持ちを抱いて、一生生きて行くんだ。 みんな心が死ぬんだ。 殺人と変わらない。 その罪は限りなく重い。 僕は思った。 性犯罪は心を殺す殺人だ。

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