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第10話

次の日僕は幸治を正門で待った。 そこには茜ちゃんの姿もあった。 よほど納得がいかないのだろう。茜ちゃんも幸治が大好きで幸治も茜ちゃんが好き。 僕は2人をいつも嫉妬しながら見ていた。 幸治の隣の茜ちゃんを、本当は消えてしまえばいいのにって思った事もある。 僕も茜ちゃんになんか負けないくらい君が好きなんだ。 茜ちゃんと幸治が別れることを願っていた。 きっとそれでも僕とはくっついてはくれないんだろうと知りながらも。 茜ちゃんが 僕をチラチラ見ながら気まずそうにしているのが分かった。 昨日幸治に振られたのを僕にみられたと思い込んでいるんだろう。 でもね、茜ちゃん。実際は違うんだよ。 幸治は君が好きだからこそ、別れる選択をせざるを得なかったんだ。 分かってあげて欲しい。 だけど、僕は茜ちゃんに優しい言葉をかけることは出来ない。 幸治の秘密を茜ちゃんに話すことは絶対出来ない。 勘ぐらす様な言葉をかけるわけにもいかない。 これ以上あいつを傷付けないでやって欲しい。 今は特に別の意味で茜ちゃんが邪魔に見える。 しばらくして、幸治が力無く歩いてくる姿が見えた。 絶対前を向かない。チラッとも横も見ない。 ひたすら足元だけを確認するかのように見て、やっとの思いて登校して来た様子だった。 チッ!茜ちゃんが幸治の元へ走り出した。 ほっといてやれよ!僕は茜ちゃんにイラついた。 きっと彼女は悪気などない。それは分かってる。 知らないって酷い事してしまうんだね。 僕も続いて走り出した。 茜ちゃんが幸治の近くまで来た時、 横から別の人物が急に幸治の肩に手を回した。 幸治はこれでもかと言うくらい驚いた顔をして、腕を振り払おうとして、その人物の顔を見て真っ青になった。 その怯えきった目、その小刻みに震える体。 茜ちゃんも足を止めた。 僕はそいつの顔を素早く見た。 こいつだったのか! 3年サッカー部先輩、川端。 正樹が言ってた言葉を思い出した。 君を襲ったのはサッカー部3年3人組だと。 川端は怯える幸治の肩に手を回したまま、 「よ!元気か?」 そう言って、幸治を見ながらニヤニヤした。 ゾッとするくらい気持ちが悪かった。 「おい!何してる!そいつから手を話せよ!」 僕は咄嗟に叫んだ。 「何?お前先輩に向かってその口の聞き方いいとでも思ってんのか?」 低音の迫力のある声だった。 一瞬次の言葉を失った。 川端は僕を睨んだ後、ゆっくりと幸治に顔を近ずけ言葉を発した。 「この前良かったぜ。また宜しく」 小さい声だったけど、確かに川端はそう言った。 幸治は川端の腕を死にものぐるいで払って、来た道へ走り出した。 茜ちゃんは意味もわからず、ポカンと見ていた。 僕は走り出した。 幸治を追いかけて。 学校なんかどうでもいい。 ここで幸治に追いつけなかったら、幸治はこの世から去るのではないかと恐怖が襲って来た。 ひたすら走って追いかけた。 君は運動神経がいい。 君に追いつくのは大変だった。 でも見失わないように走って走って走りまくった。 1人目発見。川端!お前に必ず判決を降す! だが今は幸治を落ち着かせないと! そっちが優先だ。 「幸治!待てよ!」 息切れしながら叫んだが、止まってなどくれない。 ともかく追いかけないと! 早く追いつかないと! そして僕の願いがやっとかなった。 追いついた。 そして生まれて初めてぼくは君を抱きしめた。 「落ち着け!幸治!大丈夫!落ち着け!」 何度も何度も君を抱きしめたまま、叫んだ。 君は暴れ狂ったが、ゆっくりゆっくりと力を抜いていってくれた。 そして君が脱力して膝を着いた時、僕は抱きしめていた腕をゆっくり外した。 君は腕も着いてうなだれた。 君の手がゆっくり耳を塞ぎ、聞いたことのないような声で叫んだ。 耳を塞いだまま、叫びながら、頭を地面に落とした。 体は小刻みに震え、声も小さくなってきた。 そして、だんだん鼻をすすりながら微かに涙声が漏れてきた。 どんなに怖かったか!どんなに悔しかったか! やはり性犯罪者は気が狂ってる。 あんな気持ちの悪いセリフを被害者の耳で囁くなんて、平気で近ずいて来れるなんて。 あいつらクズの中のクズだ。 死ねばいいのに… 今の僕の本音だ…

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