目が覚めた時、天井が見えた。 はっとして起き上がった。 周りを見渡した。 俺はベットの上に居た。 カーテンで囲まれたベットの上にいることに気づいてホッとした。 そうだ。俺はトイレで川端にまた、汚い口や手や体臭で汚された。 気持ちが悪い。今すぐ風呂に入りたい。 だが、ここはトイレ。 シャツを床から拾って、先ずは着た。 ボタンを止めてる手が震えて苦しい。 チャイムもなったし、何事もなかったかのように教室に戻らなきゃ。 吐き気がする。トイレの蓋を開けた瞬間、嘔吐した。 口をすすがなきゃ！ とりあえず流して蓋を閉めたら、めまいがしてきた。 ドアを開けて出ようと思ったが、川端が去った後すぐカギを閉めた。それをまた外さなきゃ！ 視界も悪いし手も震えて、やっとの思いでカギを外したがそれまでだった。 ドアは空いたが俺はそのまま記憶が飛んだ。 茜。大好きだった茜。もう俺は君の手に触れることも、その唇に触れることも叶わない。 俺は汚れてしまった。 汚物と化した。 何よりこんな自分をもう見られたくない。こんな惨めな俺を。 ただ願いが叶うなら、こんな惨めな目に合った事実だけは知られたくない。 俺の最後のプライドだった。 光星には、全て悟られた。 あいつは茜に知られたくない俺の気持ちも大切にしてくれてる。 そして何より光星は、俺の気持ちを分かろうと努力していつもそばに居てくれ、応援してくれている。 こんな時、本当に大切な友達に気付かされた。 何を聞いてもあいつは俺を裏切らなかった。 なのに、川端はあいつを倒して…。 そう、あの後どうなった？ あいつは俺を追って来なかった。 大丈夫だったのか？！ 俺はベットから立ち上がってカーテンを開けた。 目の前にはぽつんと椅子に座った光星が居た。 「気が着いたのか！？」 光星は俺に言った。 「光星、お前は？怪我は？！」 俺は叫ぶように尋ねた。 「俺は大丈夫だよ！それより幸治、お前川端にまた何かされたのか…？」 悲しそうに俺を見つめる光星。 「大丈夫だ。1度も2度も同じだから…」 「違う！絶対違う！おまえは被害者なんだ！同意のもとではないのに、なぜ何回も同じ目に合わされなければならない？おかしいだろ！」 「あいつは俺を脅すんだ。バラされたくなければって。結局俺は弱みを握られてるんだ。逃げられないんだよ…」 そう、あいつは今後も脅す気だ。 なぜ被害者の俺が脅されるんだ？ バラされて困るのは、俺なんだよな。理不尽な事実に希望も何もない。 「俺がおまえを救う！必ず！」 光星。おまえは本当にいいやつだよな。 きっとこんなこと知ったやつは、俺を避けるに違いない。 おまえだけは、いつも俺に寄り添ってくれて。 本当におまえに俺は助けられてる。 おまえになら甘えられる気がする。 勇気づけてくれて、本当にありがとう。 地獄から抜け出せなくても、こんなステキな友達が出来たことはかけがえのない喜びだ。 君は俺のかけがえのない友達だ。