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第一章・5
潮のコレクションは、順調に売れた。
まさかこんな高値が、という額に驚くこともあった。
売れれば、発送しなくてはならない。
潮は大切な品々を、思い出を噛みしめながら梱包していった。
「大事にしてもらえよ」
まるで、我が子を嫁に出すような気持ちだ。
一週間で、潮の部屋はすっかりがらんとしてしまった。
部屋の隅に積もった綿埃だけが、やけに目立つ。
「総額82万7千650円」
給料の3ヶ月分には足りないが、そこはオマケしてもらおう。
実を言えば現代社会において、律儀に給料3ヶ月分の婚約指輪を渡す男性は少ない。
大抵が、1ヶ月分くらい。約35万円で収めているのだが。
アニメやゲーム、マンガには詳しいが、世間の一般常識には弱い潮は、高価な指輪を買う道を選んだ。
「明日、これを渡してプロポーズだ!」
潮は大切に指輪の入ったケースをバッグにしまうと、興奮して眠れない夜を過ごした。
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