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第一章・6
翌日、肩を落とした潮の姿があった。
彼の夢は、思いきり砕けて散ったのだ。
『え!? 神崎さんと結婚!? 冗談でしょぉ~っ!?』
けらけらと笑う、実由。
指輪を出すと、一転して気味の悪いものを見る眼になった。
『わ、悪いけど、私、彼氏いますから!』
後は、逃げるように去って行った。
潮をさらに打ちのめしたのは、給湯室での会話だった。
コーヒーの空き缶を洗おうと出向いたのだが、そこで女子社員が噂話に花を咲かせていた。
『で、指輪まで渡そうとしたらしいのよ!』
『付き合ってもいないのに、ですか?』
『キモッ! 神崎さん、ヤバッ!』
『実由ちゃん、可哀想よね~』
『しばらく、私たちでガードしてあげなきゃ、ですよ』
『ストーカーされなきゃ、いいけど』
実由に結婚を断られたこともショックだったが、自分が『キモ井ヤバ夫』にされた追い打ちが待っていた。
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