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第二章 初めまして、お兄ちゃん♡
「マジか? これ、ホントは人間なんじゃないのか?」
無意識に、潮は眉をひそめていた。
きめ細かな肌に、植毛とは思えない頭髪や睫毛。
起動していないので、疑似生命維持活動はストップしている。
呼吸や心拍が無いのが、AIである唯一の証拠だった。
「し、死体だったりして」
ははは、と乾いた笑いを押し出し、焦ってスイッチを探した。
「え~、舌の裏を長押し、っと」
取説を手に、潮は起動スイッチを入れようとした。
しかし、ふと思いとどまった。
「ここはひとつ、ロマンチックに行こう」
そろそろと、潮はAIに唇を重ねた。
自分の舌を、彼女の咥内へ忍び込ませる。
そして、その舌先で起動させた。
ゆっくりと瞼を開くAIを、潮は期待を込めて見つめていた。
「ご利用ありがとうございます。名前を登録してください。音声で構いません、どうぞ」
「成功だ!」
思ったより低いボイスだが、キンキン声よりましだ。
しかし、名前、と来た。
「名前、かぁ。そうだな、MX710HSのMをとって、絵夢(えむ)にしよう」
「了解しました。次に、あなたの名前を登録してください。音声で構いません、どうぞ」
「神崎 潮です。よろしく」
「了解しました」
こうして潮の手に寄って、絵夢の設定が次々となされていった。
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