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第二章・3
「仕方ない、弟にでもするか」
外見はどう見ても、自分より幼い10代後半の姿だ。
もう30歳に届こうという潮は、自然にそう思った。
「人間関係は、弟でお願いしまーす」
半ばやけ気味に言い放ち、胡坐をかいた。
時間は3秒ほどだったろうか。
しかしその後、絵夢と名付けた人型AIは、滑らかな動作で立ち上がった。
「お兄ちゃん、お腹すいてない? 僕、何か作るよ。何がいい?」
ぱああっ、と目の前が明るく開けた心地がした。
(お兄ちゃん♡ とか! ……いいッ!)
こぶしを震わせ感極まっている潮を、絵夢は覗き込んでくる。
「どうしたの?」
「何でもないんだ。あ~、そうだな。まだ昼だから、軽くチャーハンでも食おうか」
「うん! キッチン、どこ?」
絵夢を連れて行くと、しばらくキッチンをサーチしていたが、おもむろにフリーザーから冷凍ピラフを取り出した。
(すごい。どこに何があるか、すぐに検索できるんだ)
おまけにレンチンではなく、ちゃんと強火のフライパンで炒めてくれた。
レタスとトマト、ひよこ豆のサラダまで作ってくれた。
「お味は、どう?」
「美味い!」
自分で作るより格段に美味しいチャーハンが、そこにはあった。
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