12 / 27

第二章・4

「絵夢は、食べない……よね。さすがに」 「お兄ちゃんが一緒に食べて欲しい、って言うなら食べるよ」 「食べる、って。食べた後、どうするんだよ」  さすがに、消化器官まで搭載されているはずがない。 「ん~、後で、こっそり捨てる」 「もったいないなぁ」  そんな些細なことで笑顔になりながら、潮の心はどんどん潤いを取り戻していった。 「お兄ちゃん、洗濯するからお洋服脱いで」 「お兄ちゃん、掃除機かけるから、ちょっとどいて」 「お兄ちゃん、晩ご飯、何にする?」 「家族って、いい……ッ!」  訳あって、児童養護施設で育った潮に、家族はいなかった。  初めての温かなぬくもり。  二人で仲良く好きなアニメの録画を見ながら、潮はこの買い物に満足していた。  ただ……。 (弟にしては、ちょっとべったりくっつきすぎなんだよなぁ)  潮の肩に頭を預け、すっかりもたれている絵夢。  これではまるで。 (恋人、じゃないか!)

ともだちにシェアしよう!