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第三章・7

 うん、と潮のグラスにビールを注ぎながら、絵夢は浮かない顔だ。 「でもね、何となく解る。僕、もうそんなに長く持たないんだな、って」 「な、何で!?」 「たぶん、前のマスターが結構無茶な使い方してたんじゃないかな」  でも、お兄ちゃんは優しいよね。 「エッチも毎日じゃないし、すごく大切に抱いてくれるし」 「あ、当たり前だろ! 弟なんだから!」  この話は、もう終わり! と無理やり会話を切った潮だが、絵夢の言葉がずっと引っかかっていた。 「前のマスター、って。一体誰なんだ」  無茶な使い方。  そして、絵夢のこの言葉。 『エッチも毎日じゃないし、すごく大切に抱いてくれるし』  推測するに、前の持ち主が絵夢に過酷なセックスを強いていたのでは?  風俗のセクソイドも、売れっ子になると壊れるのも早い、と言う。 「壊してたまるか。絵夢は、俺の弟なんだから」  ベッドの隣では、絵夢がすでに休止モードに入っている。  潮は、絵夢が来てから初めて不安な夜を過ごした。

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