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第四章・5

 仕事を続けながらの受験勉強は難しかったが、潮は歯を食いしばって耐え抜いた。  大好きなフィギュアの収集も、再開することなくやめた。  そのお金は、大学の授業料に当てた。  30歳の新入生は奇異の眼で見られたが、どうということはなかった。  全ては、絵夢を治すためだから。  人型AIの基本理念から学び、その構造、仕組、働きまで頭に叩き込んだ。  卒業後は、セクソイドの工場へエンジニアとして入社した。  数年の月日は製品の質をさらに向上させており、人工皮膚も比較的簡易に脱着できるようになっていた。    そして、運命の日。  深夜の研究室に、潮は絵夢を運び込んだ。  震える手でメスを持ち、ボディ部分の人工皮膚を剥いだ。    人間で言えば、脊髄のある位置。  ここが、絵夢のバッテリーの搭載されている位置だ、と今の潮には解っていた。 「あった……」  沈黙した器械が、そこに眠っている。  潮は素早くそれを外し、自ら開発した最新式のバッテリーをはめ込んだ。

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