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第2話
中田清光。
同僚……といっても、28歳になったばかりの外山とは一回り以上、年齢が離れているようだった。
『嘘ぉー、中田さんって45歳なんですかぁー』
とある平日の、職場の休憩時間。
外山の耳には女の同僚の何人かの声が聞こえる。確かに、仕事中とは言え、休憩中に何を話そうが構わないが、オフィスにいるのは自分達だけではないので、せめて煩く声を張り上げるのは止めて欲しいと外山は苦々しく思った。
しかも、渦中の中田も満更でもなく、笑いながら受け答えをしていた為、さらに苦々しかったのを覚えている。
『うん、もし、結婚してたら、××山さんや××川さんくらいの娘がいてもおかしくなかったかもね』
ちなみに××山という同僚も××川という同僚も35は絶対越えており、中田がお世辞を言っているのは明らかだった。
だが……
『いやだー、それだと、私達20代になっちゃうじゃないですかぁ!』
『てか、独身なんですかぁ? 中田さん、モテそうなのにー』
と言い、ますます甲高い声を上げて、オフィス内は静寂とは無縁の場所になっていった。
しかも、これだけだと中田は単なる女性に良い顔をしている中年男だが、中田はギリギリに出社して、定時の5分前には帰り支度をし出して、定時丁度に帰宅するような男だった。
『じゃあ、お疲れ様でしたー』
勿論、中田が残業している日も年に何回かくらいはあるが、いつもキリの良いところまで片づけたり、万事ベストを尽くしてから帰る外山とは違い、数える程度だ。
おまけに、それでいて、中田の仕事にはミスも殆どないのだが、2割3割くらいのやる気と7割8割の適当さで仕事をやっている感じがして、どうも外山は気に入らなかった。
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