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第5話

 しくじってしまったら、1つ、2つと連鎖していくように続いてしまうことがあるが、外山としては最悪の出来事だった。  せめて、中谷に振られていないか、中田に電話がかからなければ、と外山は思ったが、今は中田に詫びるのが先決だった。 「すみません。用事はなかったんですけど、知らない間に中田さんの連絡先の画面になっていて、弾みで発信してしまっていたのかも」  中谷の連絡先を消した弾みで、中田の連絡先が表示され、たまたま運悪く登録されていた番号へ電話がかかってしまう。ありえないことではないが、同じ起こるにしても、タイミングが謀ったように悪くて、外山は一刻も早く中田との電話を切りたかった。  ただ、中田にしてみれば、これと用事もない上に、青年と楽しんでいたところを邪魔されたのだ。  しかも、中田はまだイく前だったようだ。 「あ、そうなんだ……ふぅん」 「ええ……すみません、本当に」  普通なら中田が「良いよ」と許すなり、「君ね……」と苦言を言い出すなりするのだろうが、中田は間違いなく、前者のタイプの人間だろうと外山は思っていた。  中田がいかに女に甘くとも、男には厳しいというタイプでもない。  でなければ、そもそも、真夜中にかかってきた電話を時間が空いているものの、律義に折り返したり、楽しんでいたところを邪魔された後もあはっと笑って受け答えしたりするとも外山は思えなかった。  だが、中田は予想外のことを言ってきた。 「良いよって言いたいんだけどね……うーん、どうしたものかな?」  中田は何かを悩んでいるようだったが、外山に非がある以上は中田にキレたり、電話を切ったりはできない。  それ以前に、中田は上司ではないが、今の会社に勤めている以上は仕事を共にする相手で、行きずりの相手ではない。  しかし、これでは、あまりにも埒が明かないのも事実だった。 「あの、私にできることなら大抵のことはさせていただきます。何で悩んでるか、教えていただけないでしょうか?」  できるだけ角を立てずに、なかなか話が前に進んでいかない顧客に対してするような返しで中田の希望を外山は聞き出す。  すると、中田は外山に聞こえるか聞こえないかで、フッと笑った。

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