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第11話

 *** 「少しずつでいいから」  あやすように背中を叩き、優しく言葉を促してやると、腕の中にいる華奢な弟は小さな嗚咽を漏らし始める。  愛斗は本人が思っているよりずっと臆病な性質で、十六歳になった今でも、出会った幼い頃と変わらず、自分の気持ちを言葉にするのが上手くできないままだった。  それは、彼の気質もあるのだろうが、幼い頃に受けた虐待のトラウマも大きいだろう。それから、彼を取り巻く今の環境も。 「マナ」  ため息を吐きながら、耳元で低く明斗が告げれば、途端にガタガタと大きく震える小柄な体が愛おしい。 「僕は、僕…… は、にいさ…… あ、あきとさんの、助けに、必要な人に…… なりたくて、だから…… 」 「うん、それはこの前聞いた。でも、マナは今のままでも必要だし、大切だよ。だから、学校なんていかなくていいだろ? 」 「でも、でも…… 」 「ん? 」 「…… ッ! 」  唇を開閉させてはいるが、言葉の出ない愛斗の姿が愛おしくてたまらないから、唇に軽くキスをした。  ここ数日、このやりとりはあったのだが、それ以上を語らないから〝仕置き〟することになったのだ。 「言えない? 」  内腿へと指を滑らせ、ことさら優しく告げてみる。  それだけで、愛斗のペニスが芯を持つのが分かったから、ここ数日の調教の成果に明斗の口角が僅かに上がった。 「どうして、こんなこと、するの? にいさ…… あきとさん、恋人いて、僕は、そのうち、出て行かないと…… いけない。だから、だから…… 」  抱き寄せて、小さな顔中に何度もキスを落とす内、涙をボロボロと流しながらも、震える声でようやく愛斗は心の内を明かしはじめた。 「僕は、僕には、あきとさんしか、いない。でも…… だけど、あきとさんは…… 」 「見たのか? 」  熱を持たない声音で告げるとビクリと体が硬直する。〝何を〟見たかは言わなかったが、それでも全て察したように、「ごめんなさい」を繰り返した。

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