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第6話
改めて段ボールの中身を物色する。衣服の他には食料品、ボードゲーム等の娯楽品、それに……大量の本が入っていた。
「医学書からライトノベルまでなんでもござれか……」
「これはなに?」
ヤクモが興味津々だ。俺は段ボールの中から一冊絵本をとってヤクモに渡す。
「本。文字を読むことで色んな話が分かるんだ」
「どんな話?」
「ほんとに色々だ。昔何があったか歴史が分かったり、科学的な……そうだな、鳥がなんで空を飛べるのか説明したり、誰かの考えをその人がいなくても知ることができる」
「それが本!? ボクも読めるの?」
本を受け取ったヤクモはページを開いて……おいそれ上下逆さまだぞ。
「読めないよアサヒ」
「本を読むには書いてある字を覚える必要があるからな。あとそれ持ち方逆」
ヤクモの眉根が悲しそうに寄る。
「字なんて知らないよ……」
「おーい。何のための教育係だと思ってるんだー。教えるに決まってるだろ」
「いいの!?」
「おう」
そうと決まれば紙と鉛筆。が、想定の範囲内だとでもいうように段ボールの中に入っていた。わあ、ひらがな練習帳もあるぞ。させろと。
「じゃ、ちゃぶ台出して勉強するか?」
「うん!」
その時初めて見たヤクモの満面の笑みを、俺は忘れないと思った。
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