6 / 14

第6話

 改めて段ボールの中身を物色する。衣服の他には食料品、ボードゲーム等の娯楽品、それに……大量の本が入っていた。 「医学書からライトノベルまでなんでもござれか……」 「これはなに?」  ヤクモが興味津々だ。俺は段ボールの中から一冊絵本をとってヤクモに渡す。 「本。文字を読むことで色んな話が分かるんだ」 「どんな話?」 「ほんとに色々だ。昔何があったか歴史が分かったり、科学的な……そうだな、鳥がなんで空を飛べるのか説明したり、誰かの考えをその人がいなくても知ることができる」 「それが本!? ボクも読めるの?」  本を受け取ったヤクモはページを開いて……おいそれ上下逆さまだぞ。 「読めないよアサヒ」 「本を読むには書いてある字を覚える必要があるからな。あとそれ持ち方逆」  ヤクモの眉根が悲しそうに寄る。 「字なんて知らないよ……」 「おーい。何のための教育係だと思ってるんだー。教えるに決まってるだろ」 「いいの!?」 「おう」  そうと決まれば紙と鉛筆。が、想定の範囲内だとでもいうように段ボールの中に入っていた。わあ、ひらがな練習帳もあるぞ。させろと。 「じゃ、ちゃぶ台出して勉強するか?」 「うん!」  その時初めて見たヤクモの満面の笑みを、俺は忘れないと思った。

ともだちにシェアしよう!