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第7話
「休憩! 休憩だストップ! なあ、もう疲れただろ? 休もう?」
「大丈夫。もうちょっとで全部書ける」
「ごめん嘘ついた。俺が疲れた」
「アサヒは休んでていいよ」
そういう訳にはいかないって。俺はため息をついてちゃぶ台に突っ伏した。
幼児向けの絵本と一緒にひらがなの読み方を教えてみたら、恐ろしい気合で字を覚え始めたヤクモ。形を覚えたかったら手で書いてみるのも手だぞ、なんてアドバイスしたのも火に油を注いだ気がする。
ちゃぶ台の上に散乱するたどたどしい字の書かれたプリントを見て、俺が初めて字を習った時はこんな風じゃなかった気がすると思った。
「アサヒ、これなんて読むんだっけ」
「『や』。お前の名前にも入ってるだろ」
「ああ……ヤクモの『や』」
またがさがさと何か書き始めたと思ったら、ふふっと笑いを零して白い自由帳を見せてきた。
「アサヒの『あ』!」
んー、ミミズがのた打ち回ったようにしか見えないが、がんばれば『あ』に見えないこともない、気がする。子供の成長を見守る父親ってこんな感じだろうか。俺はそんな歳じゃないしヤクモもそんな歳じゃないけど。微笑ましい気分だった。
「『い』はいたいのい……『う』はうさぎのう……」
字を覚えると一緒に絵本を読み上げる。ときどき間違ってたら教える。その繰り返し。
「『や』は……」
「ヤクモの『や』!」
間髪入れずにツッコむ。ヤクモがにこっとしたのをきっかけに、二人で笑い出した。
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