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第8話

 書いては読みあげ、分からなくなれば俺に教わりつつ。  ヤクモはある程度まで覚えると子供向け絵本などを読み進め、それが読めることにとても喜んでいた。こうなるともうやる気がブーストアップしてしまい、昼食休憩をはさんでヤクモは恐ろしいスピードで文字を覚えていた。ひらがなが判別できるようになり、カタカナもいくつか覚えたくらい。 「んーうー……」 「熱心なのはいいけど、食事中にスプーンまわして書き順覚えるのはやめとけ。行儀が悪いことだから」  今は夕食中である。ちなみにメニューはルー使ったカレー、らっきょと福神漬けはなし。自分で作った中では割と美味しいと思うのだが、ヤクモがあの調子なのでよく分からない。知恵熱か、少し上気した表情でぼんやりとろとろと手を動かしていた。  ……というか、あれだけ動かしてまだ手が動くのか。なんとなくヤクモの手を見てはっとした。  手を伸ばしてぱっとヤクモの右手を取る。 「うわ、まだ汚れてらー……」  鉛筆の芯で手のひらが黒くなっていた。一応食べる前に手拭で拭かせていたのだが、やっぱりきちんと手を洗わせるべきだった!  そんなこんなで手を放して頭を抱えるうちにヤクモはカレーを食べきってしまった。どうかしたの、とでもいいたげな表情。 「お皿洗うんだよね?」  言いながら空になった皿を持って立ち上がるヤクモ。  そうだなそういうふうに教えたもんなでもその手で洗うのはよそうな。 「ヤクモ、それは……水につけといてくれ。お前は先に風呂に入ろう」 「ふう……ん?」  手だけじゃない、ついでに体全体を風呂で洗ってしまえばいい。 「風呂に、入るって?」 「あ、そうかお前入り方分からないのか……」  え、てことは一緒に入るのか……?   男同士で……!?

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