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第10話(R15)

「考えてみれば裸の付き合いとかいうよな。だから意識する方が間違いなんだよな。ははは……はは……」  自分に言い聞かせるようにつぶやいた言葉は予想以上に上っ面だけですべっていた。 「どうしたの? アサヒ」 「なんでもない。痒いとこないか?」 「ううん。気持ちいい」  向かい合ってヤクモの髪をわしわしと洗う。指の腹でこめかみの所をすい、と撫で上げるとヤクモは一瞬目を閉じた。だが、また見開く。泡が怖くないのだろうか。  小さな腰掛けに座ったヤクモは手持無沙汰らしくまじまじと俺の体を見つめる。服着替える時も思ったけど人の体に興味深々のようだった。 「あんま、見るなよ……」 「ん、うん」  視線を下へずらしたヤクモが「ん?」と疑問の表情を作った。 「ヤクモ、ここ大丈夫? なんかついてるよ」 「え? 何……っぎゃあ!」  おいやめろそこを握るな痛い痛い痛い! 「やめろって!!!」  慌ててヤクモの手を掴む。叫んだ瞬間にヤクモは手を放したが、ああもうまだ心臓がばくばくと脈打っている。 「ここはほんとデリケートだから大事にしてくれ頼む」 「それ、なに? なんか他と見た目が違う、」 「形容すんなぁ! お前にもついてるだろ、その……ち、ちんこ」  びっとヤクモの股間を指さす。自分も立派なモノついてるじゃないか!  つられて下を向いたヤクモは自分の腹の下についてるものを見て、目を丸くした。 「……ほんとだ。うわ、うわ」  おそるおそるそれを握り、形を確かめるようにさする。 「ちんこ?」 「ごめんやっぱペニスって呼んどけ。そっちの方がまだ恥ずかしくない、気がする」 「恥ずかしいの? 体について話すのって」 「んー……特にここらへんは、な。だってセックスに関連するしな」 「セックス?」 「あー……」  いずれ話すことになるけどこんな早くになるとは。 「動物だったときだってしたんだろ、多分……子作り。交尾か?」 「……ああ……」 「俺ら雄だからこれ使うんだよ」 「どこに?」 「言わせる気か」  つい突っぱねるとヤクモが悲しい顔をして俯いた。なぜしょんぼりしている。 「教えてくれないの?」 「風呂場で性教育とかほんとその……」 「人間について教えてくれるんじゃないの?」  違うの? と上目遣いされる。違わないがしかし、こういうのを教えるのはもっと後でもいいじゃないか。 「……こ、こういう所で教えるものじゃないんだよ!」  ほら目瞑れ、そういったら大人しく目を閉じたヤクモの頭に洗面器の中のお湯を流しかけた。

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