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第12話

 ぱちん、と紐を引っ張って電気を消す。 「おやすみ」 「おやすみ……アサヒ」  お互いにそう言って寝たはずだったのだ。  でも、呼ばれた。誰かに名前を。 「アサ……ヒ……」  がばっと跳ね起きて辺りを見る。暗闇だが目は慣れて声の正体もすぐに気づいた。  俺の隣で荒く息を繰り返しているヤクモ。しばらく前から起き出していたようだった。 「大丈夫か……」  口を大きく開けて呼吸する合間に、あつい、と一言吐き出した。 「風邪か? そうだ湯冷めとか……」  病気の可能性を考えて手を伸ばす。ええとこの場合、原因と症状を連絡したらすぐ元に戻してくれるんだったような。  手のひらをヤクモの頬に当てる。かあっと熱かった。多分、体全体がそうなのだ。そういえばタオルケットも足元でぐちゃぐちゃになったままだ。 「何か、冷やせる物とってくるか」  立ち上がろうとして服の端をヤクモに捕まれる。 「アサヒ、なんか、ここおかしい」 「え、どこ……っ!?」  何か怪我でもしたかと思ったが、ヤクモが指差してるのは股間。しかも中からナニカが突き上がっている。  これってもしかしてなくもスタンダップか。 「あー……熱の原因はこれか……」 「病気なの? ボク人間になれない?」  不安げに聞くヤクモに俺は空笑いした。 「いや、ただの生理現象だからな。オナニーでもすりゃ治るんじゃね」 「オナニー……?」  あ、また墓穴。 「アサヒ、教えてよオナニー」 「あああああああ……」

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