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第16話

 「また泣いてるんか」   低い声がして、長い腕が俺を掴んで引き寄せた。  アイツの胸に寄りかかるように抱きしめられていた。  「・・・泣きなや」  アイツが困ったように言った。  アイツは溜息をついた。  また困らせてしまったんかと思ったら、さらに泣けてきた。  「・・・ホンマに」  アイツはまた溜息をついた。   起き上がって、俺をしっかりと抱きしめてくれた。  胸にすがり泣く。  珍しく、指が髪を撫でてくれた。   いつもは背中を撫でる以上はしてくれないのに。  嬉しくて胸に顔を擦り付けてしまった。  髪を撫でる指が首筋に触れて、俺は思わず震えた。  アイツの指も震えていた。  「父さんに聞いてきたんやろ」  アイツは優しい声で言った。  俺はびっくりして思わずアイツを見上げた。  「・・・休みの日に東京って。分かりやすいわ、お前」  アイツは呆れたように笑った。  「・・・でも、これでわかったやろ。・・・俺はあかんのや。やめとけ」  アイツはきっぱりと言う。  でも、じゃあ、なぜ、今強く俺を抱きしめるんや。  声は冷たいのに、その腕は何で震えながら俺を抱きしめているんや。  さらに泣けてしまう。  抑えられない嗚咽か零れだしてしまう。  「泣かんといて・・・」  アイツは心の底から困ったような声を出す。  俺は必死で涙を止めようとした。  でも流れるのは止めれなかった。  でも、なんとか笑えた。  俺はアイツに泣きながらやけど、笑って言った。  「・・・もう俺に触ってくれへんでもええよ。ありがとう」  俺の言葉にアイツは固まった。  無表情なまま俺をみてる。  「・・・お前を助けてくれる人が絶対にあらわれる。俺ではあかんのやろ・・・でも絶対にお前を助けてくれる人がおる。その人が現れるのに、俺がお前に触ってもらうわけには・・・いかんやろ。俺はお前の家族でええ」  俺は言った。  家族でいい。  こんな風に抱きしめられることめ、あの優しい指も、コイツを助けることが出来る人のもんや。  俺のもんやない。  その人が現れるまで、せめて家族としておらせてくれればいい  「・・・お前はホンマに」  アイツが震える声で言った。  こんなにアイツの目が黒く見えたことはなかった。  透明な闇。  その中に落ち込んで、二度と浮かび上がりたくはないと思った。  「ホンマに・・・アホやろ!!」  アイツは苦しげに言った。  顎を掴まれ、唇と唇が合わされた。  その唇が震えているのはいつもと一緒だったけれど、触れただけで優しく離れるはずの唇は、より強く押し付けられていた。  戸惑う俺の唇を、アイツの舌が割った。  俺が自分の中にアイツの舌が入っているのだとわかった時には、もう、強引に口の中を蹂躙されていた。  アイツに余裕がないのはわかった。  ただ、がむしゃらに貪られていた。  俺もただ必死でその舌に応えた。  俺もアイツも・・・こんなキスは初めてで、でも、相手の舌や唾液に飢えていた。  欲しい。  ただそれだけを思う。  アイツが自分の中におる。  それだけでたまらなくなる。  呼吸も上手く出来ない。   でも、溢れる唾液を飲み、その舌を貪る。  アイツか俺の後頭部を掴む指が痛い。  でもそんなのどうでもよかった。  もっと。  もっと。  欲しいとしか思わなかった。   俺は情けないことにキスだけで射精していた。  唇が離れた時、それが嫌で俺はまた泣いた。  宥めるように頬や額にキスが落とされた。  「アホが・・・」  でもアイツは怒った口調で言った。  乱暴に服が脱がされた。  ドロドロの下着と、出したばかりのものを見た時だけ、一瞬アイツは微笑んだ。  でも、次の瞬時苦しげな顔をした。  「クソっ」  その声は痛みに耐えるようだった。  ソファに押し倒された。  俺しか脱いでないことが恥ずかしくてたまらない。  「俺だけ裸なん・・・恥ずかしい・・・」  俺は必死で訴える。  アイツはまた少しだけ笑った。  アイツはさっさと服を脱ぎ捨てた。  ズボンも下着も脱いだ。  俺はアイツの身体から目が離せない。  均整のとれた、男らしい身体。  長い手足。  アイツは綺麗だった。  自分の身体の貧相さに泣きそうになった。  そして、見たことあるソコはガチガチに勃起しているソコは・・・、覚えていたモノより大きかった。  服をきていて貰った方が良かったと思ってしまった。  アイツも俺の身体から目を離そうとはしなかった。  アイツの喉がゴクリと鳴った。  俺はアイツに比べたらガリガリやし、こんなに綺麗やない。  貧相や。  でもアイツは俺に興奮してくれてるんや。  それが嬉しかった。  俺は俺の上に覆い被さろうとしてくるアイツに指を伸ばした。  触ってええの?  お前に触ってええの?  アイツは俺の手を掴んだから、あかんのやと思ってまた泣きそうになった。  アイツは俺の指に一本ずつキスをして、自分の心臓の上に俺の手を押し付けた。  ドクンドクン。  アイツの心臓の音。  アイツの胸。  アイツの肌。  俺は今度は嬉しくて泣いた。  ずっとずっと・・・触りたかったんや。  胸から腹までのラインを撫でる。  頬から首筋までを撫でる。  「お前や・・・お前や」  俺は譫言のようにくりかえす。  はじめて触れた。  お前に触れた。  この指の先にお前がいる。  そして、アイツのデカイそれに触ろうとしたら、アイツが笑った。   「後でや」   そう言って、俺の手を止めてしまった。  「・・・お前の中で出す。触られたら出てまう。俺はもう限界や。・・・今から俺は酷いことする。かまへんか?」  アイツは真剣な顔で言う。  「構わへん」  俺は即答した。  「・・・わかってへんくせに」  アイツの顔が歪んだ。

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