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第21話
俺は絶句した。
それは克明に描かれた俺だった。
俺は殺されていた。
何度も。
何度も。
首を締められ、
ナイフで喉を斬られ、
腹に穴を開けられ、そこにアイツのものを押しこまれ、犯されながら。
火で焼かれ、
生きながら喰らわれ、
俺をアイツは殺していた。
何度も何度も。
それか愛なのが分かった。
鉛筆の線の一つ一つが甘い優しさを伝えてきた。
コイツ、この男にはこれが愛なのだ。
幼い日、母親が甘く焼かれたのを見た日から。
母親か自分達を甘く焼こうとした日から。
だからコイツが俺を愛せないのもわかった。
愛してると認めてしまうことが出来ないのだ。
愛したら殺してしまうから。
コイツがこの世界で殺したいのはオレだけなのも分かった。
流石に身体が震えた。
コイツのヤバさは俺が思っている以上だった。
誰かが救えるようなものではなかった。
コイツにはコイツには。
俺が愛するこの男には、
愛と殺すことは同義語なのだ。
でも、俺は・・・。
俺はスケッチブックを閉じ、元にもどした。
俺はアイツの腕の中に戻る。
俺もアイツを抱きしめて眠った。
目覚めたらアイツか困ったような顔をしていた。
俺は笑ってしまった。
アイツとしては不本意な夜やったわけや。
俺を愛せないのにあそこまでしてしまったわけで。
俺からアイツにキスをした。
アイツがますますの困った顔するのがおかしい。
「ベッドにまで連れ込んどいて、なんて顔してんねん」
俺は大笑いした。
アイツは戸惑う。
昨日あんだけ泣いていた俺がこの調子。
ますます困ってるんがおかしかった。
助けたろう。
「ええで。身体だけで・・・心はくれんでもええ」
俺は言った。
お前を助けたる。
アイツの黒い目が俺の言葉に不思議そうに揺れる。
「・・・お前は俺を好きにならんでええ。でも、俺はお前が好きや。それでええ。たまに抱いてくれたらええ」
俺は言った。
俺を愛せない。
それでいい。
殺されるのはかまへん。
でも、お前かそうしたないのも分かった。
でも、俺を手放したくもないのも分かった。
そんな身勝手な自分に苦しんでるのも分かった。
全部こみでそれでええ。
愛の言葉もいらん。
約束もいらん。
なんもいらん。
お前すら手に入らんでもええ。
でもええ。
全てお前の望む通りに。
「たまに・・・抱いてくれるか、それだけでええねん」
俺は笑った。
心を見せてくれとも思わん。
だってお前は見せたくないんやろ。
俺にだけは絶対に見せたくないんやろ。
だからええ。
俺は微笑んだ。
アイツは何か呟き、俺を抱きしめて号泣した。
俺はアイツの背中をいつまでも撫でてやった。
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